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PIC/S GMPガイドライン アネックス15 ークオリフィケーション関連要件の対応例ー 【シート略名:Annex 15本文】

※1 出典:平成27年7月8日付け 厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課 事務連絡「PIC/SのGMPガイドラインを活用する際の考え方について」 の一部改正について
※2 アネックス15では、User Requirements Specificationに「ユーザー要求規格」の用語が使用されているが、ここでは一般的に用いられている「ユーザー要求仕様書」とした
※3 アネックス15では、Qualificationを「クオリフィケーション」と「適格性評価」の2種類の用語が使用されているが、ここでは「クオリフィケーション」とした。

発行日:2024年 7月26日

アネックス15のクオリフィケーション関連要件 (※1) クオリフィケーション
関連活動の要件の解釈


I
D
クオリフィケーション関連活動の対応例 留意点
見出し 原文
(QUALIFICATION AND VALIDATION)
和訳
(クオリフィケーション及びバリデーション)
URS(User Requirements Specification:ユーザー要求仕様書)の作成と維持管理 (※2) クオリフィケーション(リクオリフィケーションを含む)(※3)
PRINCIPLE(原則)

This Annex describes the principles of qualification and validation which are applicable to the facilities, equipment, utilities and processes used for the manufacture of medicinal products and may also be used as supplementary optional guidance for active substances without introduction of additional requirements to Part II.

Qualification:Action of proving that any equipment works correctly and actually leads to the expected results. The word validation is sometimes widened to incorporate the concept of qualification.
(Glossary, PE 009-17 (Annexes) )

本アネックスは、医薬品の製造に用いられる施設、設備、ユーティリティ及び工程に適用されるクオリフィケーション及びバリデーションの原則について記載し、PartIIに追加の要求をもたらすことなく原薬に関する補足的かつオプションであるガイダンスとしても用いられる。

クオリフィケーション:機器が正しく動作し、実際に期待される結果に導くことを証明する活動。用語の”バリデーション”は、クオリフィケーションの概念を取り込み拡大されることがある。(用語集、PE 009-17 (Annexes))
(参考訳/厚労省訳無し)

医薬品の製造に用いられる設備、施設、ユーティリティあるいはシステムは、アネックス15のクオリフィケーションの原則が適用されること。

クオリフィケーション
機器が正しく動作し、実際に期待される結果に導くことを証明する活動。用語の”バリデーション”は、クオリフィケーションの概念を取り込み拡大されることがある。(用語集、PE 009-17 (Annexes))
(参考訳/厚労省訳無し)

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

1

【アネックス15の適用】
医薬品の製造に用いられる設備、施設、ユーティリティあるいはシステムに関するURSでは、適用文書にアネックス15を盛り込む。

(注)留意点 2.を参照のこと。

【バリデーションマスタープランあるいは同等の文書の作成:アネックス15の適用】
バリデーションマスタープランあるいは同等の文書において、適用文書にアネックス15を盛り込む。

1.「クオリフィケーション」は、PE 009-17 (25 August 2023): Annexes GLOSSARY(用語集)による定義以外に、以下の通りもう一つの定義が存在する。

PI 006-3 (25 September 2007): RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN , INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION の 8. GLOSSARYによる定義:

Qualification
""Identification of equipment attributes related to the performance of a particular function or functions and allocation of certain limits or restrictions to those attributes.""

クオリフィケーション
ある機能/機能群の実行に関わる装置属性の特定と、それら属性の限界/制限条件の割り当て
(参考訳/厚労省訳無し)

2. クオリフィケーションの対象を示す際に用いられる用語「設備、施設、ユーティリティあるいはシステム」は、PIC/S GMPガイドライン パートIで用いられている「建物」と「設備」に相当する。

It is a GMP requirement that manufacturers control the critical aspects of their particular operations through qualification and validation over the life cycle of the product and process.

Lifecycle: All phases in the life of a product, equipment or facility from initial development or use through to discontinuation of use. (Glossary)

製造業者が、製品及び工程のライフサイクルにわたり、クオリフィケーション及びバリデーションを通じて彼らの個々の作業の重要な部分を管理することはGMPの要求事項である

ライフサイクル: 初期開発あるいは使用開始から使用中止に至るまでの製品、設備又は施設の寿命における全ての段階。(用語)

製品及び工程のライフサイクルにわたり、クオリフィケーションとリクオリフィケーションを通じて、製品の品質に影響すると考えられる設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの重要アスペクト(Critical Aspects)を製薬会社が管理すること。

(注)留意点 1.を参照のこと。

2

【重要アスペクトを含む要求仕様の特定】

プロセスバリデーションに使用される設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの要求仕様を、重要アスペクト(Critical aspects)を含めてURSに規定する(下記参照)。重要アスペクト(Critical aspects)は、重要品質特性(CQAs: Critical Quality Attributes)や重要工程パラメータ(CPPs: Critical Process Parameters)などの製品品質/工程要件やコンピュータ化システム要件と、これらに係るGMP要件からを特定する。URS発行前には品質リスクアセスメント(正当性の確保と形式度を高める)を行い、重要アスペクト(Critical aspects)を含む要求仕様の対象範囲と程度の設定において品質リスク(クオリファイされた状態を恒常的に確保できないリスク)を受容可能な水準にする。

(1) 設備(含;コンピュータ化システム):設備が適切に据え付けられ、コンピュータ化システムがアネックス11の要件を満足し、正しく稼働する為の設備の据付条件やその許容範囲等
(2) ユーティリティ:設備を正しく稼働させる為の種類や能力、容量等
(3) 工程:製品を製造する為の製品標準書に記載の設備稼働上の物性、温度、圧力、時間等の条件と許容範囲、アラートを含む警報値

(注)留意点 1, 2, 3, 4, 6.を参照のこと。

【要求仕様⇒設計要素/クオリフィケーションへの展開とクオリフィケーションの実施】

URSで特定した重要アスペクト(Critical aspects)を含む要求仕様に影響を与えると考えられる設計要素を展開し、この設計要素に対応するクオリフィケーション(DQ/IQ/OQ/PQ)実施計画書を策定の上、クオリフィケーションを実施する。クオリフィケーション実施計画書の発行前には品質リスクアセスメント(正当性の確保と形式度を高める)を行い、クオリフィケーションの対象範囲と程度の設定において品質リスク(クオリファイされた状態を恒常的に確保できないリスク)を受容可能な水準にする。

(注)留意点 4. 5. 6.を参照のこと。

1. クオリフィケーションの対象を示す際に用いられる用語「設備、施設、ユーティリティあるいはシステム」は、PIC/S GMPガイドライン パートIで用いられている「建物」と「設備」に相当する。

2. URSの文書化について
URSは構造設備導入時、プロジェクトの進捗に応じて設計とともに段階的に構築される。また運用時においては、構造設備のライフサイクルにわたる知識の深化とともに改訂管理される。URSでは重要アスペクト(Critical aspects)の要求仕様が特定できるように表現すること。なお、クオリフィケーションとの紐づけを考慮して、要件毎に番号化しリスト形式で表現すると管理しやすい。

3. 構造設備導入時のURSの取り扱いについて
構造設備導入時のURSは、設計・コミッショニングとのタイムリーな連携に留意して、URSの改訂手順を適切に規定・管理すること。なお、コミッショニングは通常、装置メーカーやベンダー等が設備工事を行う際に、設備の引渡し条件を確保するために実施する施工検査であり、クオリフィケーションは医薬品製造会社が、その設備を使って要求する品質の医薬品が製造可能なのかを検査(合否判定)する活動である。一般的には医薬品製造会社が製品品質を考慮して、装置メーカーやベンダー等のコミッショニングを必要な程度コントロールし、その結果に基づきクオリフィケーションを実施している。従って、コミッショニングとクオリフィケーションの連携が重要となる。

4. 重要アスペクト(Critical aspects)の要求仕様について
重要アスペクト(Critical aspects)の正式な定義は見当たらない。ここでは「Critical」を「重要」と訳した。本来「Critical」は致命的な意味を有することに留意したい。
重要アスペクト(Critical aspects)の要求仕様の例を次に示す。
- 重要品質特性(CQAs: Critical Quality Attributes)や 重要工程パラメータ(CPPs: Critical Process Parameter)に影響する構造設備の設計要求仕様
- 重要なコンピュータ化システムの設計要求仕様
- GMP要件を満足させるために重要な設計要求仕様(機能しないと品質欠陥に陥る)

5. 構造設備導入時のクオリフィケーションの取り扱いについて
クオリフィケーションは、設備等が適切に据え付けられ、正しく稼働し、期待される結果が得られる事を確認し、文書化することである。具体的には製品標準書の内容(条件)やプロセス条件、GMP条件等を基準に、重要アスペクト(Critical aspects)を含めて品質に影響する設計要素を品質リスク(クオリファイされた状態を恒常的に確保できないリスク)に応じて検証する。構造設備導入時のクオリフィケーションでは、コミッショニング(FATやSAT等)における検証データが引用される。そのため、コミッショニングでの当該データインテグリティの確保に留意する必要がある。

6. クオリフィケーション及びリクオリフィケーション活動における品質リスクアセスメントの重要な視点を以下に示す。
(1) 構造設備 導入時
品質劣化防止/汚染防止/交叉汚染防止/人への対応(定常操作、非定常操作、介入操作)/コンピュータ化システム(発停、制御、表示、警報、記録、電子記録/電子署名、監査証跡、保管/アーカイブ、バックアップ、データインテグリティの確保等)/変動要因への対応(季節変動、異常気象、経時変化、劣化等)/研究開発からのインプット (CQAs、CPPs等)/導入時の知識(設計、コミッショニング等)/プロセスバリデーションやSOPsとの整合性確保、他
(2) 商業生産時
導入時の視点に加えて、商業生産時の知識(メンテナンス等)/インシデントやアクシデントの反映(構造設備、工程)/変更管理や逸脱への対応(構造設備、工程)/製品品質の照査の結果、他

3

【製品及び工程のライフサイクルにわたるクオリファイ状態の一貫性の管理】

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、重要アスペクト(Critical aspects)を含む要求仕様がクオリファイされていることを追跡できるように、トレーサビリティマトリクス「重要アスペクトを含む要求仕様×設計要素×クオリフィケーション活動(DQ/IQ/OQ/PQ)」を作成する。

(注)留意点 1. 2. 3. 4. 5.を参照のこと。

【製品及び工程のライフサイクルにわたるクオリファイ状態の一貫性の管理】

同左

4

【製品及び工程のライフサイクルにわたる変更管理】

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、システム改造時には重要アスペクト(Critical aspects)を含む要求仕様の追加、削除、編集を行う。このURSを基点にリクオリフィケーション活動を行うことで、重要アスペクト(Critical aspects)を含む要求仕様が常にクオリファイ状態にあることを確保する。

(注)留意点 1. 4. 5.を参照のこと。

【クオリフィケーション&リクオリフィケーションの実施】

構造設備の導入時のクオリフィケーションに加えて、構造設備の導入後は、設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、重要アスペクト(Critical aspects)を含む要求仕様が常にクオリファイ状態にあることを確保する。そのため、当該設備、施設、ユーティリティあるいはシステムのメンテナンス時や変更時には、事前と事後にリクオリフィケーション状態を評価することで、クオリファイされた状態の維持を確保する。リクオリフィケーション実施計画書の発行前には品質リスクアセスメント(正当性の確保と形式化要)を行い、リクオリフィケーションの対象範囲と程度の設定において品質リスク(クオリファイされた状態を恒常的に確保できないリスク)を受容可能な水準にする。

(注)留意点 4. 5. 6.を参照のこと

5

【製品及び工程のライフサイクルにわたりクオリファイ状態を維持・深化させるための知識管理】

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、トレーサビリティマトリクスを構成する「重要アスペクトを含む要求仕様×設計要素×クオリフィケーション活動(DQ/IQ/OQ/PQ)」の知識の深化に応じてクオリファイされた状態の精度を向上させる。

(注)留意点 1. 4. 5. 6.を参照のこと。

【クオリファイ状態を維持・深化させるための知識管理】

同左

Any planned changes to the facilities, equipment, utilities and processes, which may affect the quality of the product, should be formally documented and the impact on the validated status or control strategy assessed.

Control Strategy:A planned set of controls, derived from current product and process understanding that ensures process performance and product quality. The controls can include parameters and attributes related to drug substance and drug product materials and components, facility and equipment operating conditions, in-process controls, finished product specifications, and the associated methods and frequency of monitoring and control. (ICH Q10) (Glossary)

製品の品質に影響すると思われるような施設、設備、ユーティリティ及び工程に対する計画されたいかなる変更については正式に文書化し、バリデートされた状態あるいは管理戦略への影響について評価しなければならない。

管理戦略:最新の製品及び製造工程の理解から導かれる、製造プロセスの稼働性能及び製品品質を保証する計画された管理の一式。管理は、原薬及び製剤の原材料及び構成資材に関連するパラメータ及び特性、設備及び装置の運転条件、工程管理、完成品規格及び関連するモニタリング並びに管理の方法及び頻度を含み得る。(ICHQ10) (用語)

製品の品質に影響すると思われる設備、施設、ユーティリティあるいはシステムに対するあらゆる変更については、正式に文書化し、クオリファイされた状態あるいは管理戦略への影響についてアセスメントすること。

管理戦略
最新の製品及び製造工程の理解から導かれる、製造プロセスの稼働性能及び製品品質を保証する計画された管理の一式。管理は、原薬及び製剤の原材料及び構成資材に関連するパラメータ及び特性、設備及び装置の運転条件、工程管理、完成品規格及び関連するモニタリング並びに管理の方法及び頻度を含み得る。(ICHQ10) (用語)

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

6

【URS変更の正式な文書化とクオリファイ状態へのインパクト・アセスメント】

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムのURSをクオリファイした後に変更する際には、医薬品品質システムの元に文書化し、当該変更においてもクオリファイ状態にあることをアセスメントする。

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

【URS変更に伴うリクオリフィケーション対応】

同左

1. クオリフィケーションの対象を示す際に用いられる用語「設備、施設、ユーティリティあるいはシステム」は、PIC/S GMPガイドライン パートIで用いられている「建物」と「設備」に相当する。

2. 変更管理については本アネックス15の11. CHANGE CONTROLを参照のこと。

Computerised systems used for the manufacture of medicinal products should also be validated according to the requirements of Annex 11.

Computerised systems:A system including the input of data, electronic processing and the output of information to be used either for reporting or automatic control.
 (Glossary, PE 009-17 (25 August 2023); Annexes)

医薬品の製造に使用するコンピュータ化システムについてもまた、アネックス11の要求に従ってバリデートされなければならない。

コンピュータ化システム:データの入力、電子的な処理及び報告/自動制御に使用される情報の出力を含むシステム。(用語集、PE 009-17; Annexes)
(参考訳/厚労省訳無し)

医薬品製造に使用するコンピュータ化システムは、アネックス11の要求に従ってバリデーション(クオリフィケーションを含む)されること。

コンピュータ化システム
データの入力、電子的な処理及び報告/自動制御に使用される情報の出力を含むシステム。(用語集、PE 009-17; Annexes)
(参考訳/厚労省訳無し)

7

【コンピュータ化システムに対する要求仕様】

医薬品製造に使用するコンピュータ化システムのURSには、URSにアネックス11「Computerised Systems」の必要要件を盛り込む。

(注)留意点 1.を参照のこと。

【コンピュータ化システムのクオリフィケーション/リクオリフィケーション】

医薬品製造に使用するコンピュータ化システムのクオリフィケーション要件には、アネックス11「Computerised Systems」の必要要件を盛り込む。

1. URSはプロセス要件とコンピュータ化システム要件を併せて1本化し、コンピュータ化システムURSはMES、LIMSなどプロセス制御に関連しない情報システムに対して作成することが考えられる。しかし、コンピュータ化システムの設計がプロセス要件の設計に比べて遅れて進捗するため、URSを分離した方が文書をハンドリングしやすい側面もある。
URSを分離して作成する場合は、例えば次の事を考慮する必要がある。

- 重要工程パラメータ(CPP)がゲージの目視読取り等(非自動化)の場合、これらをプロセスURS側のみに記載するだけでよいのか。
- DCSやPLC等で自動化するプロセスの場合、プロセス制御要件をコンピュータ化システムURS側のみに記載するだけでよいのか。
- 上記の懸念からプロセス要件等を重複記載する場合、改訂漏れによる不整合発生を誘発させない仕組み作りをどうするか。

The relevant concepts and guidance presented in ICH Q8, Q9, Q10 and Q11 should also be taken into account.

ICHQ8, O9, Q10 及びQ11に示されている関連するコンセプトやガイダンスもまた考慮されなければならない。

ICHQ8, O9, Q10 及びQ11に示されている関連するコンセプトやガイダンスを考慮すること。

8

【ICH Q8への対応】

管理戦略の一環として、開発工程で確認された製剤の重要品質特性(CQA: Critical Quality Attribute)と重要工程パラメータ(CPP: Critical Process Parameter)から展開された重要アスペクト(Critical aspects)を製剤施設のURSに織り込む。また、設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、構造設備の知識の深化に応じてクオリファイされた状態の精度を向上させる。

【ICH Q8への対応】

管理戦略の一環として、重要アスペクト(Critical aspects)を含む品質に影響する設計要素に対して、設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、知識管理と品質リスクアセスメントを組み合わせることにより、クオリファイされた状態を維持・向上させる。

 

9

【ICH Q9への対応】

ICH Q9(品質リスクマネジメント)の手法を考慮して、URSに対して品質リスク(クオリファイされた状態を恒常的に確保できないリスク)を受容可能な水準にする。

【ICH Q9への対応】

クオリフィケーション実施計画書に対して品質リスクアセスメントを行い、クオリフィケーションの範囲と程度の設定において、品質リスク(クオリファイされた状態を恒常的に確保できないリスク)を受容可能な水準にする。

10

【ICH Q10への対応】

医薬品品質システム(PQS: Pharmaceutical Quality System)に基づき、設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまでURSを管理する。(「管理できた状態」に繋げる)

(注)管理できた状態(State of Control):管理の組み合わせが継続する製造プロセスの稼働性能及び製品品質について恒常的な保証を提供する状態。(ICH Q10)

【ICH Q10への対応】

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用の使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまでクオリファイされた状態を維持する。つまり、構造設備導入時はクオリフィケーション、導入後はリクオリフィケーションを実施する。また、恒常的にクオリファイされた状態にあることを定期的に評価する。(「管理できた状態」に繋げる)

(注)管理できた状態(State of Control):管理の組み合わせが継続する製造プロセスの稼働性能及び製品品質について恒常的な保証を提供する状態。(ICH Q10)

11

【ICH Q11への対応】

管理戦略の一環として、原薬の重要品質特性(Drug Substance CQA: Critical Quality Attribute)とこれに影響する工程パラメータ・単位操作から展開された重要アスペクト(Critical aspects)を原薬製造施設のURSに織り込む。また、設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、構造設備の知識の深化に応じてクオリファイされた状態の精度を向上させる。

【ICH Q11への対応】

管理戦略の一環として、重要アスペクト(Critical aspects)を含む品質に影響する設計要素に対して、設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、知識管理と品質リスクアセスメントを組み合わせることにより、クオリファイされた状態を維持・向上させる。

GENERAL(一般的事項)

A quality risk management approach should be applied throughout the lifecycle of a medicinal product.

Quality risk management: A systematic process for the assessment, control, communication and review of risks to quality across the lifecycle. (ICH Q9)(Glossary)

LifecycleAll phases in the life of a product, equipment or facility from initial development or use through to discontinuation of use. (Glossary)

医薬品のライフサイクルを通じて品質リスクマネジメントのアプローチを適用すること。

ライフサイクル:初期開発あるいは使用開始から使用中止に至るまでの製品、設備又は施設の寿命における全ての段階。(用語)

品質リスクマネジメント: ライフサイクルにわたる品質に対するリスクのアセスメント、コントロール、コミュニケーション、レビューに対する系統だったプロセス。(ICH Q9) (用語)

医薬品のライフサイクルを通じて品質リスクマネジメントのアプローチに基づき、URSを設定の上、クオリフィケーションを実施すること。

12

【製品及び工程のライフサイクルにわたり品質リスクマネジメントを適用したURSの運用】

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、要求仕様の範囲と程度を品質リスクアセスメントを通じて設定・管理する。

(注)留意点 1.を参照のこと。

【品質リスクアセスメントのクオリフィケーション/リクオリフィケーション計画への適用】

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、品質リスクアセスメントを通じたクオリフィケーション/リクオリフィケーションの範囲と程度を設定する。

(注)留意点 1.を参照のこと。

1. 品質リスクアセスメントの実行タイミング/サイクル
URS又はクオリフィケーション実施計画書の作成/変更等にあたり、GMP上の意思決定を行う承認前に品質リスクアセスメントを行うこと。

As part of a quality risk management system, decisions on the scope and extent of qualification and validation should be based on a justified and documented risk assessment of the facilities, equipment, utilities and processes.

Quality risk management: A systematic process for the assessment, control, communication and review of risks to quality across the lifecycle. (ICH Q9) (Glossary)

Lifecycle: All phases in the life of a product, equipment or facility from initial development or use through to discontinuation of use. (Glossary)

クオリフィケーション及びバリデーションの適用範囲と程度についての決定は、品質リスクマネジメントシステムの一部として、妥当性を示し、文書化された施設、設備、ユーティリティ及び工程のリスク評価に基づいて行わなければならない。

品質リスクマネジメント: ライフサイクルにわたる品質に対するリスクのアセスメント、コントロール、コミュニケーション、レビューに対する系統だったプロセス。(ICH Q9) (用語)

ライフサイクル: 初期開発あるいは使用開始から使用中止に至るまでの製品、設備又は施設の寿命における全ての段階。(用語)

クオリフィケーションの適用範囲と程度についての決定は、品質リスクマネジメントシステムの一部として、設備、施設、ユーティリティあるいはシステムに対する品質リスクアセスメント(正当性を示し、文書化を行うこと)に基づくこと。

品質リスクマネジメント: ライフサイクル
にわたる品質に対するリスクのアセスメント、コントロール、コミュニケーション、レビューに対する系統だったプロセス。(ICH Q9) (用語)

ライフサイクル: 初期開発あるいは使用開始から使用中止に至るまでの製品、設備又は施設の寿命における全ての段階。(用語)

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

13

【品質リスクアセスメントを通した、要求仕様の対象範囲と程度の設定】

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、URSを作成/変更する際に、品質リスクアセスメントを通して重要アスペクト(Critical aspects)を含む要求仕様の範囲と程度を設定する。この品質リスクアセスメントにより、クオリファイされた状態を恒常的に確保できないリスクを受容可能な水準にする。

なお、この品質リスクアセスメントの手法については正当性を示し、文書化を行う必要がある。

(注)留意点 3.を参照のこと。

【品質リスクアセスメントを通した、クオリフィケーション/リクオリフィケーションの対象範囲と程度の設定】

クオリフィケーション/リクオリフィケーション実施計画書を作成/変更する際、品質リスクアセスメントを通してクオリフィケーション/リクオリフィケーションの範囲と程度を決定する。具体的には、URSに規定された重要アスペクト(Critical aspects)を含む要求仕様を基点に重要設計要素を展開し、クオリフィケーション(DQ/IQ/OQ/PQ)の対象範囲と程度を品質リスクに応じて設定する。クオリフィケーション/リクオリフィケーション実施計画書の発行前には品質リスクアセスメントを終える。この品質リスクアセスメントにより、クオリファイされた状態を恒常的に確保できないリスクを受容可能な水準にする。

なお、この品質リスクアセスメントの手法については正当性を示し、文書化を行う必要がある。

(注)留意点 3.を参照のこと。

1. クオリフィケーションの対象を示す際に用いられる用語「設備、施設、ユーティリティあるいはシステム」は、PIC/S GMPガイドライン パートIで用いられている「建物」と「設備」に相当する。

2. 和訳の「リスク評価」は、ICH Q9の通知文に合わせて「リスクアセスメント」とした。

3. クオリフィケーション及びリクオリフィケーション活動における品質リスクアセスメントの重要な視点を以下に示す。
(1) 構造設備 導入時
品質劣化防止/汚染防止/交叉汚染防止/人への対応(定常操作、非定常操作、介入操作)/コンピュータ化システム(発停、制御、表示、警報、記録、電子記録/電子署名、監査証跡、保管/アーカイブ、バックアップ、データインテグリティの確保等)/変動要因への対応(季節変動、異常気象、経時変化、劣化等)/研究開発からのインプット(CQAs、CPPs等)/導入時の知識(設計、コミッショニング等)/プロセスバリデーションやSOPsとの整合性確保、他
(2) 商業生産時
導入時の視点に加えて、商業生産時の知識(メンテナンス等)/インシデントやアクシデントの反映(構造設備、工程)/変更管理や逸脱への対応(構造設備、工程)/製品品質の照査の結果、他

14

【要求仕様変更時の品質リスクアセスメント】

URS変更時には、重要アスペクト(Critical Aspects)を含む要求仕様の変更による影響範囲に対して品質リスクアセスメントを行い、クオリファイされた状態を恒常的に確保できないリスクを受容可能な水準にする。

(注)留意点 3.を参照のこと。

Data supporting qualification and/or validation studies which were obtained from sources outside of the manufacturers own programmes may be used provided that this approach has been justified and that there is adequate assurance that controls were in place throughout the acquisition of such data.

製造業者以外から得られる、クオリフィケーション及び/又はバリデーションの裏付けとなる補足データは、アプローチの妥当性が示され、それらのデータを取得する過程で適切な管理がなされていることの保証があるならば、使用してもよい。

医薬品製薬会社自身のプログラム以外から得られるクオリフィケーション支援データは、アプローチの正当性が示され、それらのデータを取得する過程で適切に管理されていることの保証があるならば、使用できる。

15

【外部データの取扱い】

クオリフィケーションを支援する外部データ(FAT/SAT文書等)を特定し、これらデータインテグリティ(ALCOA+)確保のための計画を、バリデーションマスタープランあるいは同等の文書等に盛り込む。計画には、例えば次の内容を含む。

- 外部データを提供する業者に対して、アセスメント(必要時には監査を行う)を行い、適切な業者を選定する。
- 外部データを提供する業者のコミッショニング担当者に対して、適時、クオリフィケーション支援活動の教育訓練(該当する範囲)を行う。
- 外部データを提供する業者が発行するコミッショニング計画書(データインテグリティ要領を盛り込む)を品質監督のもとに照査・承認する。
- 外部データの実際の取扱いにおいて、計画通りに管理し、管理記録を残す。

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

1. コミッショニングとクオリフィケーションについて
コミッショニングは通常、装置メーカーやベンダー等が設備工事を行う際に、設備の引渡し条件を確保するために実施する施工検査であり、クオリフィケーションは医薬品製造会社が、その設備を使って要求する品質の医薬品が製造可能なのかを検査(合否判定)する活動である。一般的には医薬品製造会社が製品品質を考慮して、装置メーカーやベンダー等のコミッショニングを必要な程度コントロールし、その結果に基づきクオリフィケーションを実施している。従って、コミッショニングとクオリフィケーションの連携が重要となる。

2. 「コミッショニング」は、PI 006-3 (25 September 2007); RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN, INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION の 8. GLOSSARY に次のように定義されている。

Commissioning
""An engineering term that covers all aspects of bringing a system or sub-system to a position where it is regarded as being ready for use in pharmaceutical manufacture. Commissioning involves all the basis requirements of Installation Qualification (IQ) and Operational Qualification (OQ).""

コミッショニング
エンジニアリング用語であり、システムやサブシステムを医薬品製造に使用できる状態にするためのあらゆる側面を包含する。コミッショニングには、IQ及びOQの基礎的要求事項がすべて含まれる。
(参考訳/厚労省訳無し)

16

【クオリフィケーション/リクオリフィケーションデータのデータインテグリティの確保】

外部データ(FAT/SAT文書等)の実際の取扱いにおいて、データインテグリティ (ALCOA+)が確保されていることを計画通りに確認し、管理記録を残す。

1. ORGANISING AND PLANNING FOR QUALIFICATION AND VALIDATION(クオリフィケーション及びバリデーションの組織化及び計画)
1.1

All qualification and validation activities should be planned and take the life cycle of facilities, equipment, utilities, process and product into consideration.

Lifecycle: All phases in the life of a product, equipment or facility from initial development or use through to discontinuation of use. (Glossary)

すべてのクオリフィケーション及びバリデーションの活動は計画されなければならず、施設、設備、ユーティリティ、工程及び製品のライフサイクルを考慮して計画されなければならない。

ライフサイクル: 初期開発あるいは使用開始から使用中止に至るまでの製品、設備又は施設の寿命における全ての段階。(用語)

全てのクオリフィケーション活動は、施設、設備、ユーティリティ、工程及び製品のライフサイクルを考慮して計画すること。

(注)留意点 1.を参照のこと。

17

【クオリフィケーション/リクオリフィケーションの計画】
設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、クオリフィケーション/リクオリフィケーション活動は計画に基づき実施する。具体的には、バリデーションマスタープランあるいは同等の文書において全体計画し、クオリフィケーション/リクオリフィケーション実施計画書において個々の検証活動を計画する。

(注)留意点 1.を参照のこと。

1. クオリフィケーションの対象を示す際に用いられる用語「設備、施設、ユーティリティあるいはシステム」は、PIC/S GMPガイドライン パートIで用いられている「建物」と「設備」に相当する。

1.2

Qualification and validation activities should only be performed by suitably trained personnel who follow approved procedures.

クオリフィケーション及びバリデーションの活動は、承認された手順を順守できる適切に訓練された作業員によってのみ行われなければならない。

クオリフィケーション活動は、適切に訓練され、承認された手順を順守できる作業員のみによって行うこと。

18

【クオリフィケーション/リクオリフィケーションの手順】

クオリフィケーション/リクオリフィケーションの手順は、規定される組織(又はGMP組織)における承認体系に基づき作成する。

(注)留意点 1.を参照のこと。

1. バリデーションマスタープランあるいは同等の文書において、クオリフィケーション/リクオリフィケーションの組織及び承認体系の明確化(教育訓練の必要性も含む)を行うこと。

<参考文献>
PI 006-3 (25 September 2007); RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN, INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION
4. VALIDATION MASTER PLAN
4.5.2.9

19

【クオリフィケーション/リクオリフィケーション作業員への教育訓練と評価、認定】

クオリフィケーション/リクオリフィケーションは承認された手順を順守できる作業員のみが行うよう、当該作業員への教育訓練と評価、認定を行う。

(注)留意点 1.を参照のこと。

1.3

Qualification/validation personnel should report as defined in the pharmaceutical quality system although this may not necessarily be to a quality management or a quality assurance function. However, there should be appropriate quality oversight over the whole validation lifecycle.

Lifecycle: All phases in the life of a product, equipment or facility from initial development or use through to discontinuation of use. (Glossary)

クオリフィケーション/バリデーションを行う従業員は、医薬品質システムにおいて規定された指揮命令系統に属すものでなければならないが、必ずしも品質マネージメントあるいは品質保証関連の者でなくてもよい。しかし、バリデーションの全ライフサイクルにわたって適切な品質システムに基づく監視がなくてはならない。

ライフサイクル: 初期開発あるいは使用開始から使用中止に至るまでの製品、設備又は施設の寿命における全ての段階。(用語)

クオリフィケーションの作業員は、医薬品品質ステムにおいて規定した通りに報告すること。これは必ずしも、品質マネジメントあるいは品質保証機能への報告に限らない(may)。しかしながら、全てのクオリフィケーションのライフサイクルにわたって、適切な品質監督(Quality Oversight)が存在すること。

(注)留意点 1.を参照のこと。

20

【クオリフィケーション/リクオリフィケーションの作業員報告】

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、クオリフィケーション/リクオリフィケーションの作業員には、医薬品品質システムに規定した通りに報告(品質マネジメント/品質保証部門への報告とは限らない)させる。この報告に関しては、クオリフィケーション/リクオリフィケーションの品質監督(Quality Oversight)の元に、バリデーションマスタープランあるいは同等の文書において規定する。

1.「personnel」の訳について、厚労省訳の「従業員」だと限定的な表現のため、ここでは、1.2項の訳と同じ「作業員」とした。また厚労省訳では「report」を訳していない。
ここでは、訳文を全面的に見直した。

1.4

The key elements of the site qualification and validation programme should be clearly defined and documented in a validation master plan (VMP) or equivalent document.

製造所のクオリフィケーション及びバリデーションのプログラムのキーとなる要素について明確に規定し、バリデーションマスタープラン(VMP)あるいは同等の文書に文書化しなければならない。

バリデーションマスタープランあるいは同等の文書にはクオリフィケーションのプログラムにキーとなる要素を明確に規定すること。

21

【クオリフィケーション/リクオリフィケーションのプログラムにおけるキー要素の規定】

バリデーションマスタープランあるいは同等の文書では、当該製造所におけるクオリフィケーション活動のプログラムにキー要素を明確に規定する。キー要素については、アネックス15の各要件を参照のこと。なお、バリデーションマスタープランはバリデーション全体を統括するものであり、個々の設備等に対するクオリフィケーションの計画は別に文書化(例えば、クオリフィケーション実施計画書)することとなる。

(注)留意点 1.を参照のこと。

1. バリデーションマスタープランは要約文書であるため、簡潔、正確、明瞭であること。他の文書と情報が重複することなく既存文書を参照する形式とすること。
バリデーションマスタープランは経営陣の合意を得ること。

<参考文献>
PI 006-3 (25 September 2007); RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN, INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION
4. VALIDATION MASTER PLAN
4.5.1

1.5

The VMP or equivalent document should define the qualification/validation system and include or reference information on at least the following:

VMPあるいはそれと同等の文書は、クオリフィケーション/バリデーションシステムについて明確にし、少なくとも以下の項目を含むか、あるいは情報を参照しなければならない。

バリデーションマスタープランあるいは同等の文書には、クオリフィケーションのシステムについて明確に規定し、少なくとも以下の項目を含むかあるいは情報を参照すること;

22

【クオリフィケーション/リクオリフィケーションのシステムの規定】

クオリフィケーション/リクオリフィケーションのシステムについて、バリデーションマスタープランあるいは同等の文書において規定する。少なくとも以下の7項目を含むかあるいは情報を参照する。

 

i. Qualification and Validation policy;

i. クオリフィケーション及びバリデーションに関する方針

i. クオリフィケーションに関する方針

23

i. クオリフィケーション/リクオリフィケーションに関する方針

(特記)
・医薬品のライフサイクルにわたって、クオリフィケーション/リクオリフィケーションを通じて、当該設備、施設、ユーティリティあるいはシステム(コンピュータシステムを含む)が常にクオリファイされた状態であること。
・クオリフィケーション/リクオリフィケーション活動には品質リスクマネジメントを適用する。
・クオリフィケーション/リクオリフィケーション活動はURSを起点とする。
・FAT/SAT文書などのクオリフィケーション/リクオリフィケーション支援データの活用方針を規定する。

(注)留意点 1.を参照のこと。

1. クオリフィケーション/リクオリフィケーションに関する方針については次の資料を参照のこと。

PI 006-3 (25 September 2007); RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN, INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION
2. INTRODUCTION
2.5.12

ii. The organisational structure including roles and responsibilities for qualification and validation activities;

ii. クオリフィケーション及びバリデーションの業務に関する役割と職責を含む組織構造

ii. クオリフィケーションの業務に関する役割と職責を含む組織構造

24

ii. クオリフィケーション/リクオリフィケーションの業務に関する役割と職責を含む組織構造

(特記)
・FAT/SAT文書などのクオリフィケーション/リクオリフィケーション支援データを提供する外部組織を特定する。(教育訓練の必要性も含む)
・クオリフィケーション/リクオリフィケーション作業員への教育訓練と評価、認定を行う。
・クオリフィケーション/リクオリフィケーションの作業員には、品質監督(Quality Oversight)の元、報告させる。
・外部組織については、コミッショニング計画書を参照できる。

(注)留意点 1. 2. 3.を参照のこと。

1. コミッショニングとクオリフィケーションについて
コミッショニングは通常、装置メーカーやベンダー等が設備工事を行う際に、設備の引渡し条件を確保するために実施する施工検査であり、クオリフィケーションは医薬品製造会社が、その設備を使って要求する品質の医薬品が製造可能なのかを検査(合否判定)する活動である。一般的には医薬品製造会社が製品品質を考慮して、装置メーカーやベンダー等のコミッショニングを必要な程度コントロールし、その結果に基づきクオリフィケーションを実施している。従って、コミッショニングとクオリフィケーションの連携が重要となる。

2. 「コミッショニング」は、PI 006-3 (25 September 2007);
RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN, INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION の 8. GLOSSARY に次のように定義されている。

Commissioning
""An engineering term that covers all aspects of bringing a system or sub-system to a position where it is regarded as being ready for use in pharmaceutical manufacture. Commissioning involves all the basis requirements of Installation Qualification (IQ) and Operational Qualification (OQ).""

コミッショニング
エンジニアリング用語であり、システムやサブシステムを医薬品製造に使用できる状態にするためのあらゆる側面を包含する。コミッショニングには、IQ及びOQの基礎的要求事項がすべて含まれる。(参考訳/厚労省訳無し)

3. クオリフィケーション/リクオリフィケーションに関する役割と職責を含む組織構造については次の資料を参照のこと。なお当該組織にはQA部門の適切な機能化を図るために、品質の視点で専門領域の設計やクオリフィケーション/リクオリフィケーションをコントロールできる専門家(Subject Matter Expert)を認定したうえで配置することも考えられる。
PI 006-3 (25 September 2007); RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN, INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION
2. INTRODUCTION
2.7.1
2.7.2
2.7.3
2.7.4
5. INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION
5.1.5

iii. Summary of the facilities, equipment, systems, processes on site and the qualification and validation status;

iii. 当該製造所の施設、設備、システム、工程の概要、及びクオリフィケーション及びバリデーションの現況

iii. 当該製造所に関する以下の情報

① 施設、設備、システム、工程の概要
② クオリフィケーションの現況

(注)留意点 1.を参照のこと。

25

iii. 当該製造所の当該設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの概要、クオリフィケーション/リクオリフィケーションの現況

(特記)
・クオリフィケーション/リクオリフィケーション対象の設備、施設、ユーティリティあるいはシステム(コンピュータシステムを含む)の用途と概要を示す。
・クオリフィケーション/リクオリフィケーションの現況として、クオリフィケーション/リクオリフィケーションがどの段階にあるのかを明記する。

1. クオリフィケーションの対象を示す用語として、PIC/S GMPガイドライン パートIでは「建物」と「設備」が用いられている。

iv. Change control and deviation management for qualification and validation

Change Control: A formal system by which qualified representatives of appropriate disciplines review proposed or actual changes that might affect the validated status of facilities, systems, equipment or processes. The intent is to determine the need for action to ensure and document that the system is maintained in a validated state.(Glossary)

iv. クオリフィケーション及びバリデーションに関する変更管理及び逸脱管理

変更管理: 施設、システム、設備あるいは工程のバリデートされた状態に影響する可能性があるような、提案されたかあるいは実際の変更について、適切な部門の適格な代表者が照査を行う正式のシステム。意図するところは、システムがバリデートされた状態を維持することを確実にし、文書化するためにアクションが必要か否かを決定することである。(用語)

iv. クオリフィケーションに関する変更管理(Change Control)及び逸脱管理

変更管理: 施設、システム、設備あるいは工程のバリデートされた状態に影響する可能性があるような、提案されたかあるいは実際の変更について、適切な部門の適格な代表者が照査を行う正式のシステム。意図するところは、システムがバリデートされた状態を維持することを確実にし、文書化するためにアクションが必要か否かを決定することである。(用語)

26

iv. クオリフィケーション/リクオリフィケーションに関する変更管理及び逸脱管理

(特記)
・クオリフィケーション/リクオリフィケーション支援データとして活用するFAT/SAT文書などに対しては、請負会社との間で取り決めたコミッショニング計画書にて、変更や逸脱のマネジメントを参照できる。

(注)留意点 1. 2. 3.を参照のこと。

1. コミッショニングとクオリフィケーションについて
コミッショニングは通常、装置メーカーやベンダー等が設備工事を行う際に、設備の引渡し条件を確保するために実施する施工検査であり、クオリフィケーションは医薬品製造会社が、その設備を使って要求する品質の医薬品が製造可能なのかを検査(合否判定)する活動である。一般的には医薬品製造会社が製品品質を考慮して、装置メーカーやベンダー等のコミッショニングを必要な程度コントロールし、その結果に基づきクオリフィケーションを実施している。従って、コミッショニングとクオリフィケーションの連携が重要となる。

2. 「コミッショニング」は、PI 006-3 (25 September 2007);
RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN, INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION の 8. GLOSSARY に次のように定義されている。

Commissioning
""An engineering term that covers all aspects of bringing a system or sub-system to a position where it is regarded as being ready for use in pharmaceutical manufacture. Commissioning involves all the basis requirements of Installation Qualification (IQ) and Operational Qualification (OQ).""

コミッショニング
エンジニアリング用語であり、システムやサブシステムを医薬品製造に使用できる状態にするためのあらゆる側面を包含する。コミッショニングには、IQ及びOQの基礎的要求事項がすべて含まれる。
(参考訳/厚労省訳無し)

3. クオリフィケーション/リクオリフィケーションに関する変更管理については次の資料を参照のこと。
PI 006-3 (25 September 2007); RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN, INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION
2. INTRODUCTION
2.6.1
2.6.2
4. VALIDATION MASTER PLAN
4.5.2.10
5. INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION
5.4.4
6. NON-STERILE PROCESS VALIDATION
6.7.1

v. Guidance on developing acceptance criteria;

v. 適合基準を作成するためのガイダンス

v. 許容判定基準を作成するためのガイダンス

27

v. 許容判定基準を作成するためのガイダンス

(特記)
・判定基準の拠り所としては、プロセスからの要求仕様以外に、適用するGMP基準や社内基準、サプライヤ基準などがある。判定基準としての拠り所を明確に示すこと。

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

1. ""acceptance criteria""は厚労省訳では「許容基準」と訳されているが、GMP Part Iの訳で使われている「許容判定基準」とした。

2. クオリフィケーション/リクオリフィケーションに関する許容判定基準の作成については次の資料を参照のこと。
PI 006-3 (25 September 2007); RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN, INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION
2. INTRODUCTION
2.5.11

vi. References to existing documents;

vi. 既存文書の参照

vi. 既存文書の参照

28

vi. 既存文書の参照

(特記)
・クオリフィケーション/リクオリフィケーション活動に適用する既存文書を参照すること。

 

vii. The qualification and validation strategy, including requalification, where applicable.

vii. クオリフィケーション及びバリデーションの戦略、該当する場合は再クオリフィケーションについても含める

vii. クオリフィケーションの戦略、該当する場合はリクオリフィケーションについても含める

29

vii. クオリフィケーション/リクオリフィケーションの戦略

(特記)
・クオリフィケーション/リクオリフィケーションデータのインテグリティを確保するための戦略(本文書にある、一般的事項を参照)を規定する。
・FAT/SAT文書などをクオリフィケーション/リクオリフィケーション支援データとして活用する場合、これら外部データのインテグリティを確保するための戦略を規定する。

<

(注)留意点 1.を参照のこと。

1. クオリフィケーション/リクオリフィケーションに関する戦略については次の資料を参照のこと。
PI 006-3 (25 September 2007); RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN, INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION
4. VALIDATION MASTER PLAN
4.5.2.3
4.5.2.5
4.5.2.9

1.6

For large and complex projects, planning takes on added importance and separate validation plans may enhance clarity.

大規模で複雑なプロジェクトの場合、計画はさらに重要性を増し、別箇のバリデーション計画を作成することにより明確化されるであろう。

大規模で複雑なプロジェクトの場合には、別箇のバリデーション計画を作成することにより明確化すること。

30

【大規模で複雑なプロジェクトへの対応】

バリデーションマスタープランあるいは同等の文書については、プロジェクトの規模と複雑さに応じて、必要であれば適切な範囲を対象として別個のバリデーション計画を作成し、クオリフィケーション/リクオリフィケーション活動を明確に規定する。

 

1.7

A quality risk management approach should be used for qualification and validation activities. In light of increased knowledge and understanding from any changes during the project phase or during commercial production, the risk assessments should be repeated, as required. The way in which risk assessments are used to support qualification and validation activities should be clearly documented.

Quality risk management: A systematic process for the assessment, control, communication and review of risks to quality across the lifecycle. (ICH Q9) (Glossary)

Lifecycle: All phases in the life of a product, equipment or facility from initial development or use through to discontinuation of use. (Glossary)

クオリフィケーション及びバリデーションの活動には品質リスク管理のアプローチを用いること。プロジェクト段階あるいは商業生産における何らかの変更により知識及び理解が進むことにより、必要に応じてリスク評価を繰り返すこと。クオリフィケーション及びバリデーション活動をサポートするためにリスク評価を用いた場合は明確に文書化すること。

品質リスクマネジメントライフサイクルにわたる品質に対するリスクのアセスメント、コントロール、コミュニケーション、レビューに対する系統だったプロセス。(ICH Q9) (用語)

ライフサイクル: 初期開発あるいは使用開始から使用中止に至るまでの製品、設備又は施設の寿命における全ての段階。(用語)

(1) クオリフィケーション活動には品質リスクマネジメントのアプローチを用いること。

31

【製品及び工程のライフサイクルにわたり品質リスクマネジメントを適用したクオリフィケーション活動】

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、当該ライフサイクルにわたる品質リスクのアセスメント、コントロール、コミュニケーション、レビューに対する系統だった品質リスクマネジメントを行う。

URSを作成/変更する際には、重要アスペクト(Critical aspects)を含む要求仕様に対して品質リスクアセスメントを行い、品質リスクに応じて品質に影響する要求仕様の範囲と程度を設定する。重要アスペクト(Critical aspects)は、プロセス要件やコンピュータ化システム要件、GMP要件等から抽出する。URS発行前には品質リスクアセスメント(正当性の確保と形式化要)を行い、重要アスペクト(Critical aspects)を含む要求仕様の対象範囲と程度の設定において品質リスク(クオリファイされた状態を恒常的に確保できないリスク)を受容可能な水準にする。

(注)留意点 1. 2. 3.を参照のこと。

【品質リスクマネジメントの適用】

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、当該ライフサイクルにわたる品質リスクのアセスメント、コントロール、コミュニケーション、レビューに対する系統だった品質リスクマネジメントを行う。

クオリフィケーション/リクオリフィケーション実施計画書を作成/変更する際には、品質リスクアセスメントを通じてクオリフィケーション/リクオリフィケーションの範囲と程度を決定する。具体的には、URSで特定した重要アスペクト(Critical aspects)を含む要求仕様に影響を与えると考えられる設計要素を展開し、この設計要素に対応するクオリフィケーション(DQ/IQ/OQ/PQ)実施計画書を策定の上、クオリフィケーションを実施する。クオリフィケーション実施計画書の発行前には品質リスクアセスメント(正当性の確保と形式化要)を行い、クオリフィケーションの対象範囲と程度の設定において品質リスク(クオリファイされた状態を恒常的に確保できないリスク)を受容可能な水準にする。

(注)留意点 1. 2. 3.を参照のこと。

1. 品質リスクアセスメントでは次の視点を参考にすること。
(1) 構造設備 導入時
品質劣化防止/汚染防止/交叉汚染防止/人への対応(定常操作、非定常操作、介入操作)/コンピュータ化システム(発停、制御、表示、警報、記録、電子記録/電子署名、監査証跡、保管/アーカイブ、バックアップ、データインテグリティの確保等)/変動要因への対応(季節変動、異常気象、経時変化、劣化等)/研究開発からのインプット(CQAs、CPPs等)/導入時の知識(設計、コミッショニング等)/プロセスバリデーションやSOPsとの整合性確保、他
(2) 商業生産時
導入時の視点に加えて、商業生産時の知識(メンテナンス等)/インシデントやアクシデントの反映(構造設備、工程)/変更管理や逸脱への対応(構造設備、工程)/製品品質の照査の結果、他

2. 要求仕様やクオリフィケーション/リクオリフィケーションの範囲と程度について、品質リスクアセスメントを通して根拠を示すこと。

<参考文献>
PI 006-3 (25 September 2007); RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN, INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION
4. VALIDATION MASTER PLAN
4.5.2.3

3. 構造設備の導入段階に適用する品質リスクマネジメントでは、構造設備の新規性や複雑性、プロジェクト規模、クオリフィケーション活動の遂行体制等を考慮して、柔軟かつ適切に計画すること。

(2) プロジェクト段階(設計レベル、試運転・調整)や商業生産における何らかの変更により、設備、施設、ユーティリティあるいはシステムに関する知識及び理解が深化することを考慮し、品質リスクアセスメントを繰返し実施すること。

32

【知識の深化と品質リスクアセスメントの繰返し実施】

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムに関する知識及び理解が深化とともに、下記の各段階で品質リスクアセスメントを行う。 この品質リスクアセスメントでは、URSで規定する要求仕様に対して、品質リスク(クオリファイされた状態を恒常的に確保できないリスク)を受容可能な水準にする。

- 構造設備の導入段階(設計レベル、試運転・調整)において、URS作成時
- 構造設備の導入段階(設計レベル、試運転・調整)において、URS変更時
- 商業生産段階において、URS変更時

(注)留意点 1, 2. 3.を参照のこと。

【知識の深化と品質リスクアセスメントの繰返し実施】

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムに関する知識及び理解の深化とともに、下記の各段階で品質リスクアセスメントを行う。この品質リスクアセスメントでは、URSから展開したクオリフィケーション/リクオリフィケーションに対して、品質リスク(クオリファイされた状態を恒常的に確保できないリスク)を受容可能な水準にする。

- 構造設備の導入段階(設計レベル、試運転・調整)において、クオリフィケーション実施計画書 作成時
- 構造設備の導入段階(設計レベル、試運転・調整)において、クオリフィケーション実施計画書 変更時
- 商業生産段階において、リクオリフィケーション実施計画書 作成時

(注)留意点 1. 2. 3.を参照のこと。

(3) クオリフィケーション活動をサポートするために実施する品質リスクアセスメントでは、明確に文書化すること。

33

【品質リスクアセスメントの文書化】

URSの作成/変更において品質リスクアセスメントを行う際には、品質リスクアセスメント計画書と品質リスクアセスメント報告書を作成・承認する。品質リスクアセスメント計画書と品質リスクアセスメント報告書は、URSの根拠を紐付く文書構成となるよう文書化する。

(注)留意点 1, 2. 3.を参照のこと。

【品質リスクアセスメントの文書化】

クオリフィケーション/リクオリフィケーション実施計画書の作成において品質リスクアセスメントを行う際には、品質リスクアセスメント計画書と品質リスクアセスメント報告書を作成する。品質リスクアセスメント計画書と品質リスクアセスメント報告書は、クオリフィケーション/リクオリフィケーションの範囲と程度を紐付く文書構成となるよう文書化する。

(注)留意点 1, 2. 3.を参照のこと。

1.8

Appropriate checks should be incorporated into qualification and validation work to ensure the integrity of all data obtained.

得られた全てのデータの完全性を保証するために、クオリフィケーション及びバリデーションの業務には、適切なチェックを組み込まなければならない。

クオリフィケーション業務では、得られた全てのデータのデータインテグリティを確実にするよう、適切なチェックを組み込むこと。

34

【クオリフィケーション活動のデータインテグリティの確実化】

クオリフィケーションで得られるデータのデータインテグリティ(ALCOA+)を確実にするよう、当該データの記録には「データインテグリティのチェック」を組み込む。

(注)留意点 1.を参照のこと。

1. データインテグリティを確保するためのチェック要件は、下記の厚生労働省令にも記載されている。
厚生労働省「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の一部改正」(令和3年4月28日)(厚生労働省令第90号)
第3 逐条解説
28.第20条(文書及び記録の管理)関係

2. DOCUMENTATION, INCLUDING VMP(バリデーションマスタープランを含んだ文書化)
2.1

Good documentation practices are important to support knowledge management throughout the product lifecycle.

Knowledge management: A systematic approach to acquire, analyse, store and disseminate information. (ICHQ10)(Glossary)

Lifecycle: All phases in the life of a product, equipment or facility from initial development or use through to discontinuation of use. (Glossary)

Good documentation practiceは製品ライフサイクルを通じた知識管理をサポートするために重要である。

ライフサイクル: 初期開発あるいは使用開始から使用中止に至るまでの製品、設備又は施設の寿命における全ての段階。(用語)

知識管理: 情報を獲得し、分析し、保管し、及び伝播するための体系的取り組み。(ICH Q10) (用語)

適切な文書管理(Good Documentation Practice)は、製品ライフサイクルを通じて知識管理を支援するための必要不可欠な要素である。

知識管理: 情報を獲得し、分析し、保管し、及び伝播するための体系的取り組み。(ICH Q10) (用語)

35

【文書管理(Good Documentation Practices)の適用】

URSは、設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、データインテグリティ(ALCOA+)を保証する様に、適切な文書管理規定に基づき適切に管理する。文書管理(Good Documentation Practices)は、PIC/S GMP ガイドライン パートIの4.7, 4.8, 4.9項に規定されている通り、URSでは次の点に留意する。

- URSの全てが追跡可能となるようにする。
- あらゆる変更には署名と日付を入れ、適宜、変更の理由を記録する。
- 手書き記入は、明確で読みやすく、消去できない方法で行う。
- 旧版を保管管理する。

【文書管理(Good Documentation Practices)の適用】

クオリフィケーション/リクオリフィケーション文書は、設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、データインテグリティ(ALCOA+)を保証するよう、適切な文書管理規定に基づき適切に管理する。文書管理(Good Documentation Practices)は、PIC/S GMP ガイドライン パートIの4.7, 4.8, 4.9項に規定されている通り、クオリフィケーション/リクオリフィケーション文書では次の点に留意する。

- 記録書は、各作業を行った都度、クオリフィケーション/リクオリフィケーション活動全てが追跡可能となるように作成する。
- あらゆる変更には署名と日付を入れ、適宜、変更の理由を記録する。
- 手書き記入は、明確で読みやすく、消去できない方法で行う。また、変更は元情報の読取りができるように記載する。

 

2.2

All documents generated during qualification and validation should be approved and authorized by appropriate personnel as defined in the pharmaceutical quality system.

クオリフィケーション及びバリデーションの過程で作成されたすべての文書は、医薬品品質システムに規定された適切な従業員により承認され、オーソライズされなければならない。

クオリフィケーションで作成された全ての文書は、医薬品品質システムに規定された適切な作業員により承認され、オーソライズされること。

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

36

【URSの承認と発行】

医薬品品質システムに規定された組織(又はGMP組織)における承認体系に基づき、URSを承認し、オーソライズする。

【クオリフィケーション/リクオリフィケーション文書の承認と発行】

医薬品品質システムで規定された組織(又はGMP組織)における承認体系に基づき、全てのクオリフィケーション/リクオリフィケーション文書を承認し、オーソライズする。

1. 「personnel」の訳について、厚労省訳の「従業員」だと限定的なため、整合がとれない。ここでは、1.2項での訳と同じ「作業員」とした。

2.3

The inter-relationship between documents in complex validation projects should be clearly defined.

複雑なバリデーションプロジェクトにおける文書間の関連については明確に規定されなければならない。

複雑なプロジェクトにおける文書間の関連については、明確に規定されること。

37

【URS関連文書の相互関係の明確化】

複雑なプロジェクトでは、バリデーションマスタープラン(あるいは同等の文書)において、URS文書間やURS/クオリフィケーション文書間の関連を分かるように規定する。なお、1つのシステムに対して複数のクオリフィケーションが実施される場合には、URSを構成要素ごとにカテゴライズしておき、要求事項を容易に切り分けられるようにする。

【クオリフィケーション/リクオリフィケーション関連文書の相関関係の明確化】

複雑なプロジェクトでは、バリデーションマスタープラン(あるいは同等の文書)において、クオリフィケーション文書間やURS/クオリフィケーション文書間の関連を分かるように規定する。なお、1つのシステムに対して複数のクオリフィケーションが実施される場合、クオリフィケーション実施計画書には対象となるURS項目がわかるように明記する。

 

2.4

Validation protocols should be prepared which defines the critical systems, attributes and parameters and the associated acceptance criteria.

重要なシステム、特性、パラメータ及びそれらに伴う許容基準について規定したバリデーションプロトコールを作成しなければならない。

下記項目とこれらの許容判定基準を規定したバリデーションプロトコルと整合のとれたクオリフィケーション実施計画書を作成すること。

 - 重要な(Critical)システム
 - 重要な(Critical)品質特性
 - 重要な(Critical)パラメータ

(注)留意点 1.を参照のこと。

38

【バリデーションプロトコルとの整合確保】

URSでは、下記項目とこれらの許容判定基準を規定したバリデーションプロトコルと整合を確保する。
- 重要な(Critical)システム
- 重要品質特性(CQAs: Critical Quality Attributes)を含む、 重要な(Critical)品質特性
- 重要工程パラメータ(CPPs: Critical Process Parameters)を含む、重要な(Critical)パラメータ

【バリデーションプロトコルとの整合確保】

クオリフィケーション/リクオリフィケーション実施計画書では、下記項目とこれらの許容判定基準を規定したバリデーションプロトコルと整合を確保する。
- 重要な(Critical)システム
- 重要品質特性(CQAs: Critical Quality Attributes)を含む、 重要な(Critical)品質特性
- 重要工程パラメータ(CPPs: Critical Process Parameters)を含む、重要な(Critical)パラメータ

1. ""acceptance criteria""は厚労省訳では「許容基準」と訳されているが、GMP Part Iの訳で使われている「許容判定基準」とした。

2.5

Qualification documents may be combined together, where appropriate, e.g. installation qualification (IQ) and operational qualification (OQ).

Installation Qualification (IQ): The documented verification that the facilities, systems and equipment, as installed or modified, comply with the approved design and the manufacturer's recommendations. (Glossary)

Operational Qualification (OQ): The documented verification that the facilities, systems and equipment, as installed or modified, perform as intended throughout the anticipated operating ranges. (Glossary)

適切な場合、クオリフィケーションに関する文書は統合してもよい。例えばIQOQである。

設備据付時適格性評価(IQ): 施設、システム及び設備が、据付あるいは改造された状態で、承認された設計及び製造者の推奨事項に適合することを示す文書化された検証。(用語)

運転時適格性評価(OQ):施設、システム及び設備が、据付あるいは改造された状態で、予想される操作範囲において意図された通り稼働することを示す文書化された検証。(用語)

適切な場合、クオリフィケーションの文書を統合してもよい(may)。(例:IQとOQ)

39

【クオリフィケーション/リクオリフィケーション文書を統合する場合の対応】

適切な場合、クオリフィケーション/リクオリフィケーション文書を統合(例えば、IQとOQ)する。その場合には、バリデーションマスタープラン(VMP)あるいは同等文書に、統合が適切である理由を明記しておく。

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

1. ユニット機器や小型の汎用設備などはIQとOQをIOQとして統合し、連続してIOQを実施するのが合理的である。

2. クリーンルーム、空調システム、製剤用水設備、コンピュータ化システム、ユーティリティ設備などは、複数のサプライヤに対応し、現地施工が長期にわたる。このような設備は管理上、IQとOQを分けざるを得ない。但し、変更管理や逸脱管理が適切であれば、その限りではない。

2.6

Where validation protocols and other documentation are supplied by a third party providing validation services, appropriate personnel at the manufacturing site should confirm suitability and compliance with internal procedures before approval. Vendor protocols may be supplemented by additional documentation/test protocols before use.

バリデーションプロトコール及びその他の文書がバリデーション業務を提供する第3者から供給される場合、それらを承認する前に製造所の適切な従業員が、適切性と製造所の手順に適合していることを確認しなければならない。供給業者からのプロトコールに文書/試験プロトコールを事前に追加して使用しても良い。

(1) クオリフィケーション業務を提供する第三者がクオリフィケーション実施計画書を作成する場合、当該事業所の適切な作業員(国内では”バリデーション責任者”等)が以下の内容を確認し承認すること。

- 内容が適切であること
- 製薬企業の手順書に適合していること

(注)留意点 1.を参照のこと。

40

【URSを第三者が作成する場合の対応】

第三者がURSを作成する場合、当該事業所の適切な作業員(国内では”バリデーション責任者”等)が以下の内容を確認し承認すること。

- 内容が適切であること
- 製薬企業の手順書に適合していること

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

【クオリフィケーション/リクオリフィケーション文書を第三者が作成する場合の対応】

第三者がクオリフィケーション/リクオリフィケーション文書を作成する場合、当該事業所の適切な作業員(国内では”バリデーション責任者”)は、以下の内容を確認し承認すること。

- 内容が適切であること
- 製薬企業の手順書に適合していること

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

1.「personnel」の訳について、厚労省訳の「従業員」だと限定的なため、整合がとれない。ここでは、1.2項での訳と同じ「作業員」とした。

2. URSは製薬企業が製剤開発の経緯をもとに品質リスク評価を実施し抽出した重要アスペクトを含んでいる。そのURSに記載したれ重要アスペクトを検証するクオリフィケーション実施計画書を第三者が作成する場合、URSに関する十分な情報を製薬企業側から第三者に的確に伝える必要がある。

(2) ベンダーのプロトコルについては、製薬会社が追加の文書/テストプロトコルとして、事前に追加して使用しても良い(may)。

41

【第三者のクオリフィケーション/リクオリフィケーション文書を活用する場合の対応】

サプライヤやベンダーのクオリフィケーション/リクオリフィケーション文書については、製薬会社が必要に応じて、追加の文書やテスト計画書として、事前に補足して使う。

2.7

Any significant changes to the approved protocol during execution, e.g. acceptance criteria, operating parameters etc., should be documented as a deviation and be scientifically justified.

承認されたプロトコールを実施中に変更する場合(例えば許容基準や操作パラメータ等の重要な変更)はいかなる場合も逸脱として文書化し、科学的に妥当であることを示さなければならない。

クオリフィケーション実施中に、承認されたクオリフィケーション実施計画書に規定された許容判定基準や操作パラメータ等、重要な変更を行う場合には、いかなる場合も逸脱として文書化し、科学的に妥当であることを示すこと。

(注)留意点 1.を参照のこと。

42

【クオリフィケーション/リクオリフィケーションとURSとの連動】

クオリフィケーション実施中に許容判定基準や操作パラメータ等の重要(significant)な変更がある場合には、クオリフィケーション文書のみならず、URSの該当部分にも反映する。

(注)留意点 1.を参照のこと。

【クオリフィケーション/リクオリフィケーション文書における重要変更時の逸脱処理】

クオリフィケーション/リクオリフィケーションを実施中に、許容判定基準や操作パラメータ等の重要(significant)な変更をする場合は、いかなる場合も逸脱として文書化して科学的に妥当であることを示す。具体的には、バリデーションマスタープラン(VMP)あるいは同等文書において当該変更対応を計画する。クオリフィケーション実施計画書には、当該変更時の手順と報告方法を明確に文書化しておく。当該変更が発生した際には、クオリフィケーション実施報告書に科学的に妥当であることを示した是正処置結果を文書化する。

1. "acceptance criteria"は厚労省訳では「許容基準」と訳されているが、GMP Part Iの訳で使われている「許容判定基準」とした。

2.8

Results which fail to meet the pre-defined acceptance criteria should be recorded as a deviation, and be fully investigated according to local procedures. Any implications for the validation should be discussed in the report.

あらかじめ規定された許容基準に適合しなかった結果は逸脱として記録し、製造所の手順に従って完全に究明しなければならない。バリデーションに対するいかなる意義についても報告書の中で考察されなければならない。

(1)クオリフィケーション実施計画書に規定された許容判定基準に適合しなかった結果は逸脱として記録し、当該事業所の手順に従って十分に究明する。

(注)留意点 1.を参照のこと。

43

【クオリフィケーション/リクオリフィケーション結果の不適合時の逸脱処理】

クオリフィケーション/リクオリフィケーション実施計画書で規定された許容判定基準に適合しなかった結果は、逸脱として記録し、当該事業所の手順に従って十分に究明し、是正処置を行う。具体的には、バリデーションマスタープラン(VMP)あるいは同等文書において当該不適合の対応を計画する。クオリフィケーション/リクオリフィケーション実施計画書には、当該不適合が発生した場合の手順と報告方法を明確に文書化しておく。当該不適合が発生した際には、当該事業所の手順に従って十分に究明し、クオリフィケーション/リクオリフィケーション実施報告書に是正処置結果を文書化する。

1. "acceptance criteria"は厚労省訳では「許容基準」と訳されているが、GMP Part Iの訳で使われている「許容判定基準」とした。

(2) バリデーションに対するあらゆる影響に関して、当該逸脱報告書において考察する。

44

【クオリフィケーション/リクオリフィケーション結果の不適合処理時のバリデーション影響評価】

クオリフィケーション/リクオリフィケーション実施計画書で規定された許容判定基準に適合しなかった逸脱が発生した際には、バリデーションに対するあらゆる影響について、逸脱報告書において考察する。具体的には、バリデーションマスタープラン(VMP)あるいは同等文書において本考察を組み込む。クオリフィケーション/リクオリフィケーション実施計画書には本考察を明確に文書化しておく。当該不適合が発生した際には、是正処置結果とともに本考察を文書化する。

(2章 2.9は非該当のため削除)
  2.10

A formal release for the next stage in the qualification and validation process should be authorized by the relevant responsible personnel either as part of the validation report approval or as a separate summary document. Conditional approval to proceed to the next qualification stage can be given where certain acceptance criteria or deviations have not been fully addressed and there is a documented assessment that there is no significant impact on the next activity.

クオリフィケーション及びバリデーションの過程における次の段階へ進むことの正式な許可は、バリデーション報告の許可の一部とするか、あるいは別のまとめの文書とするかいずれでもよいが、適切な責任者によってオーソライズされなければならない。或る許容基準又は逸脱について完全な説明がなされない場合、それが次の活動に対して重大な影響がなければ、次の段階に進む条件付き承認を行っても良い。

(1) クオリフィケーションの過程における次の段階へ進むことの正式な許可は、バリデーション報告書の承認の一部、あるいは分離したサマリー文書のいずれでもよいが、適切な責任者(国内では”バリデーション責任者”)によってオーソライズされること。

45

【クオリフィケーション/リクオリフィケーションの次フェーズへの移行承認 1/2】

バリデーションマスタープランあるいは同等の文書に、次フェーズへの移行承認に関する規定を設ける。本規定では次の要件を満足させる。
- バリデーション責任者(国内では”バリデーション責任者”)にてオーソライズされること
- 文書形式は、バリデーション報告書の承認の一部、あるいは分離したサマリー文書のいずれでも可

1. " acceptance criteria "は厚労省訳では「許容基準」と訳されているが、GMP Part Iの訳で使われている「許容判定基準」とした。

(2) 或る許容判定基準又は逸脱について完全な対応がなされない場合でも、それが次の活動に対して重大な影響がないという文書化されたアセスメントがあれば、次のクオリフィケーション段階に進むための条件付き承認を行える(may)。

(注)留意点 1.を参照のこと。

46

【クオリフィケーション/リクオリフィケーションの次フェーズへの移行承認 2/2】

次フェーズへの移行承認に関する規定では、或る許容基準又は逸脱について完全な対応がなされない場合でも、それが次の活動に対して重大な影響がなければ、次の条件付き承認を行える。
・文書化されたアセスメントにより、次の活動に対して重大な影響がないことを示すこと

QUALIFICATION STAGES FOR EQUIPMENT, FACILITIES, UTILITIES AND SYSTEMS(設備、施設、ユーティリティ及びシステムのクオリフィケーション段階)
3.1

Qualification activities should consider all stages from initial development of the user requirements specification through to the end of use of the equipment, facility, utility or system. The main stages and some suggested criteria(although this depends on individual project circumstances and may be different) which could be included in each stage are indicated below:

User requirements Specification (URS):The set of owner, user, and engineering requirements necessary and sufficient to create a feasible design meeting the intended purpose of the system. (Glossary)

クオリフィケーション活動は、初期のユーザ要求規格(URS)の開発段階から設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用を終了するまでのすべての段階を考慮しなければならない。主要な段階及び各段階についていくつかの示唆される基準(個々のプロジェクトの状況に依存し、異なる)を以下に示す:

ユーザ要求規格(URS): システムの意図した目的に適合した実現可能な設計を創出するために必要かつ十分な、プロセスのオーナー、ユーザ、及び技術からの一連の要求事項。(用語)

クオリフィケーション活動では、ユーザ要求仕様書(URS)の最初の作成段階から設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用を終了するまでのすべての段階を考慮すること。

(注)留意点 1.を参照のこと。

47

【クオリフィケーション/リクオリフィケーションと連携したURSの運用管理】

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、クオリフィケーション/リクオリフィケーション活動と連携した状態でURSを運用管理する。

【クオリファイ状態の恒常的な確保】

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、クオリファイされた状態を維持する。つまり、導入時のクオリフィケーションに加えて、導入後はリクオリフィケーション活動によりクオリファイ状態を恒常的に確保する。

1. クオリフィケーションの対象を示す際に用いられる用語「設備、施設、ユーティリティあるいはシステム」は、PIC/S GMPガイドライン パートIで用いられている「建物」と「設備」に相当する。









U
R
S
3.2

The specification for equipment, facilities, utilities or systems should be defined in a URS and/or a functional specification. The essential elements of quality need to be built in at this stage and any GMP risks mitigated to an acceptable level. The URS should be a point of reference throughout the validation life cycle.

User requirements Specification (URS): The set of owner, user, and engineering requirements necessary and sufficient to create a feasible design meeting the intended purpose of the system. (Glossary)

Lifecycle: All phases in the life of a product, equipment or facility from initial development or use through to discontinuation of use. (Glossary)

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの規格をURS及び/又は機能規格の中に規定しなければならない。この段階において品質の必須要素を作り込み、いかなるGMP上のリスクについても許容可能な水準に低減しなければならない。URSはバリデーションのライフサイクルを通じて参照すべきものである。

ユーザ要求規格(URS):システムの意図した目的に適合した実現可能な設計を創出するために必要かつ十分な、プロセスのオーナー、ユーザ、及び技術からの一連の要求事項。(用語)

ライフサイクル:初期開発あるいは使用開始から使用中止に至るまでの製品、設備又は施設の寿命における全ての段階。(用語)

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの要求仕様をURS及び/又は機能仕様書に規定すること。この段階において品質の必須要素を作り込み、いかなるGMP上のリスクについて受容可能な水準に低減すること。URSはバリデーションのライフサイクルを通じて参照できること。

(注)留意点 1.を参照のこと。

48

【URSの要件】

以下の要件の元、設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの要求仕様をURS及び/又は機能仕様書に規定する。
- 設備、施設、ユーティリティあるいはシステムに対して、重要アスペクト(Critical Aspects)を含めた品質の必須要素を作り込む。
- 当該文書の承認前には品質リスクアセスメントを実施し、重要アスペクト(Critical aspects)を含む要求仕様の対象範囲と程度の設定において品質リスク(クオリファイされた状態を恒常的に確保できないリスク)を受容可能な水準にする。
- URSはバリデーションのライフサイクルを通じて、容易に参照できるようにする。

1. クオリフィケーションの対象を示す際に用いられる用語「設備、施設、ユーティリティあるいはシステム」は、PIC/S GMPガイドライン パートIで用いられている「建物」と「設備」に相当する。










D
Q
3.3

The next element in the qualification of equipment, facilities, utilities, or systems is DQ where the compliance of the design with GMP should be demonstrated and documented. The requirements of the user requirements specification should be verified during the design qualification.

Design qualification (DQ): The documented verification that the proposed design of the facilities, systems and equipment is suitable for the intended purpose. (Glossary)

User requirements Specification (URS): The set of owner, user, and engineering requirements necessary and sufficient to create a feasible design meeting the intended purpose of the system. (Glossary)

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムのクオリフィケーションにおける次の要素はDQであり、それにおいて設計がGMPに適合していることを示し、文書化されなければならない。ユーザ要求規格の要求事項は、設計時適格性において検証されなければならない。

設計時適格性評価(DQ):提案された施設、システム、及び設備が意図した目的に適していることを示す文書化された検証。(用語)

ユーザ要求規格(URS):システムの意図した目的に適合した実現可能な設計を創出するために必要かつ十分な、プロセスのオーナー、ユーザ、及び技術からの一連の要求事項。(用語)

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムはDQにおいて、以下の内容を行うこと。

- 設計がGMPに適合していることを実証し、文書化する。
- URSの要求事項を検証する。

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

49

【DQの要件】

DQの実施内容は次の通り。

- 設計がGMPに適合していることを実証し、文書化する(demonstration and documentation)
- 設計がURSで規定した重要アスペクト(Critical Aspects)を含む要求仕様に適合していることを検証する(verification)

1. クオリフィケーションの対象を示す際に用いられる用語「設備、施設、ユーティリティあるいはシステム」は、PIC/S GMPガイドライン パートIで用いられている「建物」と「設備」に相当する。














F
A
T
















S
A
T
3.4

Equipment, especially if incorporating novel or complex technology, may be evaluated, if applicable, at the vendor prior to delivery.

特に新技術あるいは複雑な技術を取り込んだ設備については、該当する場合は配送前に供給業者において評価する場合もある。

新技術や複雑な技術を取り込んだ機器等については、ベンダーの工場出荷前に評価する(該当する場合、may)。(FAT)

50

(注)留意点 1.を参照のこと。

【新技術等への対応(工場出荷前評価)】

「新技術及び複雑な技術」を取り込んだ設備等については、ベンダーの工場出荷前に評価する。(該当する場合)
この場合、バリデーションマスタープランあるいは同等の文書において「新技術および複雑な技術」範囲を明確にした上で、この評価を計画しておく。

1.「新技術及び複雑な技術」は使用目的に応じて導入される技術であるが、ベンダー等の専門的知識に基づいて設計されるものが多い。このため、重要アスペクトを含む要求仕様はベンダー等の支援の元に設定する。また、ベンダー等の支援が入る場合、実施される作業の品質、プログラム管理及び文書化に関するクオリフィケーション/リクオリフィケーション要求基準を確実に満たす責任は製薬会社にある。製薬会社は外部の請負業者/委託者の各責務を明確にすること。これらの内容はURS/機能仕様書と併せて明確化することを推奨する。

<参考文献>
PI 006-3 (25 September 2007); RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN, INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION
2. INTRODUCTION
2.5.11
2.7.3

3.5

Prior to installation, equipment should be confirmed to comply with the URS/ functional specification at the vendor site, if applicable.

該当する場合、設置に先立ち、設備がURS/機能規格に適合していることを供給業者の製造所において確認しなければならない。

据付けに先立ち、機器がURS/機能仕様書に適合していることをベンダーの工場において確認すること。(該当する場合)(FAT)

51

【FATにおける、URS等への適合性確認】

FATが必要と判断された設備の場合、設備がURS/機能仕様書に適合していることをベンダーの工場において確認する。 この場合、バリデーションマスタープランあるいは同等の文書において全体計画し、クオリフィケーション実施計画書にてこの確認を計画しておく。

(注)留意点 1.を参照のこと。

1. 特に新技術、あるいは複雑な技術を取り込んだ設備であっても、プロジェクトの合理的遂行上FATのみではURS等への適合性を評価しきれない場合は、後続のSATにより確認できる。
(設備の一部に現地工事を含む場合等)

3.6

Where appropriate and justified, documentation review and some tests could be performed at the FAT or other stages without the need to repeat on site at IQ/OQ if it can be shown that the functionality is not affected by the transport and installation.

Installation Qualification (IQ):The documented verification that the facilities, systems and equipment, as installed or modified, comply with the approved design and the manufacturer's recommendations. (Glossary)

Operational Qualification (OQ):The documented verification that the facilities, systems and equipment, as installed or modified, perform as intended throughout the anticipated operating ranges. (Glossary)

適切な場合あるいは妥当性が示された場合、もし輸送及び設置により機能が影響を受けないことが示されれば、文書の照査あるいはある検査についてはFAT又は他の段階において実施し、IQ/OQにおいて製造所で繰り返す必要ない。

設備据付時適格性評価(IQ):施設、システム及び設備が、据付あるいは改造された状態で、承認された設計及び製造者の推奨事項に適合することを示す文書化された検証。(用語)

運転時適格性評価(OQ):施設、システム及び設備が、据付あるいは改造された状態で、予想される操作範囲において意図された通り稼働することを示す文書化された検証。(用語)

以下の正当性を示すことが出来れば、文書の照査や試験をFATやその他の段階で実施することで、設備を据え付ける製造所で実施するIO/OQを繰り返し実施する必要はない。

- 当該機能が輸送や設置によって影響を受けないことを示す。
- これらの照査や試験を適切に行い正当化する。

52

(注)留意点 1.を参照のこと。

【IQ/OQの繰り返しを避けることが可能な、FAT等での検査対応】

以下の正当性を示すことが出来れば、クオリフィケーションにおける文書の照査や試験をFATやその他の段階で実施することで、設備を据え付ける製造所で実施するIO/OQを繰り返し実施する必要はない。本要件を適用する場合は、下記正当性を示したクオリフィケーション実施記録を残す。

- 当該機能が輸送や設置によって影響を受けないことを示す。
- 適用する文書の照査や試験を適切に行い正当化する。

(注)留意点 2. 3. 4. 5. 6.を参照のこと。

1. URSは計画・設計の段階でGMPリスクを受容できるようにQRMを適用し作成する。その後のクオリフィケーション/リクオリフィケーション活動(IQ/OQ)において、そのURSへの適合性を検証する流れとなる。製薬会社が実施してきたクオリフィケーション/リクオリフィケーション活動(IQ/OQ)をベンダーに一部依存する場合、製薬会社はURSを確実にベンダーに提示し、URSへの検証内容をFATの計画書に反映させる必要がある。実施される作業の品質、プログラム管理及び文書化に関するクオリフィケーション/リクオリフィケーション要求基準を満足させる最終責任は製薬会社にある。製薬会社は、外部の請負業者と製薬会社の各責務を明確にすること。これらの内容はURS/機能仕様書と併せて明確化することを推奨する。

<参考文献>
PI 006-3 (25 September 2007); RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN, INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION
2. INTRODUCTION
2.5.11
2.7.3

2. FATの試験結果をクオリフィケーション/リクオリフィケーション(IQ/OQ)に引用する場合は、製薬会社の品質保証部門を含めてFATの実施計画書及び報告書を承認すること。

3. 文書の照査や試験をFATで実施し、設備を据え付ける製造所でIO/OQを繰り返えさない場合、FATにおいてはクオリフィケーション/リクオリフィケーション担当者の配員を考慮すること。

4. FATの対象設備に前段機や後段機がある場合、あるいは他の設備に組み込まれる場合、FATを実施するベンダーの工場では、製薬会社の工場の条件を十分に反映させることができない場合がある。ユーティリティも同様である。そのため、検証条件の同等性を評価し、FATの結果を引用し、IQ/OQを省略する正当性を文書化する必要がある(システムの複雑性による)。

5. 文書の照査や試験をFATで実施し、設備を据え付ける製造所でIO/OQを繰り返えさなかった場合、ベンターの工場から製薬会社の工場までの移送及び製薬会社の工場での設置工事による影響がなかったことも評価しておくことを推奨する。

6. 複雑な設備や大型設備の場合、必要に応じて、製薬会社はベンダーの工場にて引渡し前のチェックを行うが、この引渡し前チェックをIQの代用とすることは出来ない。ただし、この段階でのチェック内容は、IQで実施されるチェック内容の多くと重複する可能性があるため、IQのチェック範囲を縮小できる可能性があることは認められる。

<参考文献>
PI 006-3 (25 September 2007); RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN, INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION
5. INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION
5.3.4

3.7

FAT may be supplemented by the execution of a SAT following the receipt of equipment at the manufacturing site.

FATは、製造所において設備を受領後にSATを実施することにより補足してもよい。

FATは設備を製造所に設置後に、SATを実施することにより補足する(may)。

53

【SATによるFATのフォロー】

FATで検証できなかった内容やFAT後に追加変更があった内容は、製造所据付後に実施するSATで補足してもよい。この場合、補足した内容をIO/OQに引用するための適切な文書化と正当化を行う。

 












IQ
3.8

IQ should be performed on equipment, facilities, utilities, or systems.

Installation Qualification (IQ):The documented verification that the facilities, systems and equipment, as installed or modified, comply with the approved design and the manufacturer's recommendations. (Glossary)

IQは、設備、施設、ユーティリティ又はシステムについて実施しなければならない。

設備据付時適格性評価(IQ):施設、システム及び設備が、据付あるいは改造された状態で、承認された設計及び製造者の推奨事項に適合することを示す文書化された検証。(用語)

設備、施設、ユーティリティ又はシステムについて、IQを実施すること。

(注)留意点 1.を参照のこと。

54

IQの対象範囲

URSで規定した設備、施設、ユーティリティ又はシステムに対して、IQを行う。

1. クオリフィケーションの対象を示す用語として、PIC/S GMPガイドライン パートIでは「建物」と「設備」が用いられている。

3.9

IQ should include, but is not limited to the following:

Installation Qualification (IQ): The documented verification that the facilities, systems and equipment, as installed or modified, comply with the approved design and the manufacturer's recommendations. (Glossary)

IQは、これらに限定されないが以下を含まなければならない:

設備据付時適格性評価(IQ):施設、システム及び設備が、据付あるいは改造された状態で、承認された設計及び製造者の推奨事項に適合することを示す文書化された検証。(用語)

IQは、これらに限定されないが以下を含むこと:

55

(注)留意点 1.を参照のこと。

【IQの要件】

IQに以下の内容を含む。但し、この内容に限定するものではない。

1. IQの要件に関わる内容は、次の資料を参照のこと。
PI 006-3 (25 September 2007): RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN , INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION
5. INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION
5.2
5.3

i. Verification of the correct installation of components, instrumentation, equipment, pipe work and services against the engineering drawings and specifications;

i. 部品、計器、設備、配管及びその他の供給手段がエンジニアリング図面及び規格に対して正しく設置されていることの検証

i. エンジニアリング図面及び仕様書に基づく、以下の正しい据付けの検証
・構成部品(配管雑品・機械部品など)
・計器・制御用計装品
・装置
・配管
・サービス(建電空・安全装置)

56

(注)留意点 1.を参照のこと。

i. エンジニアリング図面及び仕様書に基づく、以下の正しい据付けの検証
・構成部品(配管雑品・機械部品など)
・計器・制御用計装品
・装置
・配管
・サービス(建電空・安全装置)

 

ii. Verification of the correct installation against predefined criteria;

ii. あらかじめ規定した基準に対して正しく設置されたことの検証

ii. あらかじめ規定した基準に対して正しく据え付けられたことの検証

57

(注)留意点 1.を参照のこと。

ii. あらかじめ規定した基準に対して正しく据え付けられたことの検証

(注)留意点 1.を参照のこと。

1. 設置検証には、据付状態での目視検査や証拠資料の確認など、様々な方法がある。品質リスクに応じて適した方法を採用すること。

iii. Collection and collation of supplier operating and working instructions and maintenance requirements;

iii. 供給業者の操作及び作業説明書、及びメンテナンス要求事項の収集と確認

iii. サプライヤの操作/作業説明書とメンテナンス要求事項の収集と確認

58

(注)留意点 1.を参照のこと。

iii. サプライヤの操作及び作業説明書、及びメンテナンス要求事項の収集と確認

(注)留意点 1.を参照のこと。

1. 操作説明書、作業説明書及びメンテナンス要求事項(取扱説明書など)について、空調システムなどOQが終わるまで仕様が確定しにくい場合には、IQのタイミングでサプライヤからは提出され得ない。その場合にもIQでは、少なくとも提出リストの確認を行うこと。

iv. Calibration of instrumentation;

iv. 計器のキャリブレーション

iv. 計器のキャリブレーション

59

(注)留意点 1.を参照のこと。

iv. 計器のキャリブレーション

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

1. 品質に影響する計器に対するキャリブレーションは、現地ループキャリブレーション又は 計器メーカの工場出荷時単体校正記録+単体計器を除くループキャリブレーションの結果に基づくものであろうとも、真値と実測値との比較が明確になっていること。

2. 計器に求める精度は、製薬会社が生産する製品の品質特性との整合性を確保する必要がある。この精度の正当性を記録に示すこと。

v. Verification of the materials of construction.

v. 構成材質の検証

v. 構成材質の検証

60

(注)留意点 1.を参照のこと。

v. 構成材質の検証

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

1. 校正材質の検証は、材質確認試験や目視検査、材質証明書の確認など、様々な方法がある。品質リスクに応じて適した方法を採用すること。

2. 構成材質は、製薬会社が使用する原料や生産される中間品・製品の特性に基づき選定すること。










OQ
3.10

OQ normally follows IQ but depending on the complexity of the equipment, it may be performed as a combined Installation/Operation Qualification (IOQ).

Installation Qualification (IQ): The documented verification that the facilities, systems and equipment, as installed or modified, comply with the approved design and the manufacturer's recommendations. (Glossary)

Operational Qualification (OQ): The documented verification that the facilities, systems and equipment, as installed or modified, perform as intended throughout the anticipated operating ranges.(Glossary)

OQは通常IQに次いで行われるが、設備の複雑性によっては両者を併せた設置時/運転時適格性評価(IOQとして実施してもよい。

設備据付時適格性評価(IQ):施設、システム及び設備が、据付あるいは改造された状態で、承認された設計及び製造者の推奨事項に適合することを示す文書化された検証。(用語)

運転時適格性評価(OQ): 施設、システム及び設備が、据付あるいは改造された状態で、予想される操作範囲において意図された通り稼働することを示す文書化された検証。(用語)

OQは通常IQに次いで行うこと。設備の複雑性によっては両者を併せた据付時/運転時適格性評価(IOQ)として実施してもよい(may)。

61

【OQ実施のタイミング】

URSで規定した設備、施設、ユーティリティ又はシステムに対して、IQの次にOQを行う。

(注)留意点 1.を参照のこと。

1. クオリフィケーションの対象を示す際に用いられる用語「設備、施設、ユーティリティあるいはシステム」は、PIC/S GMPガイドライン パートIで用いられている「建物」と「設備」に相当する。

2. ユニット機器や小型の汎用設備などはIQとOQをIOQとして統合し、連続してIOQを実施するのが合理的である。

3. クリーンルーム、空調システム、製剤用水設備、コンピュータ化システム、ユーティリティ設備などは、複数のサプライヤに対応し、現地施工が長期にわたる。このような設備は管理上、IQとOQを分けざるを得ない。但し、変更管理や逸脱管理が適切であれば、その限りではない。

62

【IOQとしての実施】

設備、施設、ユーティリティ又はシステムの複雑性に応じてIOQとして実施する。

(注)留意点 1. 2. 3.を参照のこと。

3.11

OQ should include but is not limited to the following:

Operational Qualification (OQ):The documented verification that the facilities, systems and equipment, as installed or modified, perform as intended throughout the anticipated operating ranges. (Glossary)

OQは、これらに限定されないが、以下を含まなければならない:

運転時適格性評価(OQ):施設、システム及び設備が、据付あるいは改造された状態で、予想される操作範囲において意図された通り稼働することを示す文書化された検証。(用語)

OQはこれらに限定されないが、以下を含むこと:

63

【OQの要件】

OQに以下の内容を含む。但し、この内容に限定するものではない。

(注)留意点 1.を参照のこと。

1. OQの要件に関わる内容は、次の資料を参照のこと。
PI 006-3 (25 September 2007): RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN , INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION
5. INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION
5.4
5.5

i. Tests that have been developed from the knowledge of processes, systems and equipment to ensure the system is operating as designed;

i. 工程、システム及び設備の知識から開発され、システムが設計されたとおり稼働することを確実にするための試験

i. 本システムが設計通りに動作することを確認するために、工程、システム及び設備の知識の元に構築された試験

64

(注)留意点 1.を参照のこと。

i. 当該システムが設計通りに動作することを確実にする。OQテストは、工程、システム及び設備の知識の元に構築する。

(注)留意点 2. 3.を参照のこと。

1. URSでは、OQテスト項目に繋がる要求仕様を、工程、システム及び設備の知識に基づき構築すること。

2. OQではシステムとしての動作をテストする。ユニット単位の動作は定義されていない。

3. OQにあたり、工程、システム及び設備の知識の元に、根拠に基づいた適切な条件を設定した計画書を作成、テストを実施し、記録を残す。

ii. Tests to confirm upper and lower operating limits, and/or "worst case" conditions.

Worst Case: A condition or set of conditions encompassing upper and lower processing limits and circumstances, within standard operating procedures, which pose the greatest chance of product or process failure when compared to ideal conditions. Such conditions do not necessarily induce product or process failure. (Glossary)

ii. 稼働限界の上限、下限、及び/又はワーストケースの条件を確認するための試験

ワーストケース: 標準操作手順内で、理想的な条件と比較して製品あるいは工程の不適合を発生させる機会が最大である、操作条件の上限と下限にわたる一連の条件。そのような条件は必ずしも製品あるいは工程の失敗を引き起こすものではない。(用語)

ii. 操作限界の上下限、及び/又はワーストケースの条件を確認するための試験

65

(注)留意点 1.を参照のこと。

ii. 操作限界の上下限、及び/又はワーストケース条件を確認するためのOQテストを行う。

ワーストケース: 標準操作手順内で、理想的な条件と比較して製品あるいは工程の不適合を発生させる機会が最大である、操作条件の上限と下限にわたる一連の条件。そのような条件は必ずしも製品あるいは工程の失敗を引き起こすものではない。(用語)

(注)留意点 2.を参照のこと。

1. URSでは、 稼働限界の上下限、及び/又はワーストケースの条件に繋がる要求仕様を盛り込むこと。

2. OQにあたり、操作限界の上下限、及び/又はワーストケース条件を設定根拠に基づき設定した計画書を作成、テストを実施し、記録を残す。これら一連の条件は必ずしも製品あるいは工程の失敗を引き起こすものではないことに留意すること。

3.12

The completion of a successful OQ should allow the finalization of standard operating and cleaning procedures, operator training and preventative maintenance requirements.

Operational Qualification (OQ): The documented verification that the facilities, systems and equipment, as installed or modified, perform as intended throughout the anticipated operating ranges. (Glossary)

OQが成功裡に完了することにより、作業標準及び洗浄手順、作業者のトレーニング、及び予防的メンテナンスの要求事項を完成することが出来るはずである。

運転時適格性評価(OQ):施設、システム及び設備が、据付あるいは改造された状態で、予想される操作範囲において意図された通り稼働することを示す文書化された検証。(用語)

OQの成功裡の完了により、以下内容を最終化すること。
・作業手順
・洗浄手順
・作業者のトレーニング
・予防的メンテナンスの要求事項

66

【SOP、トレーニング等の準備対応】

バリデーションマスタープランあるいは同等の文書において、下記事項をOQ後に終えるよう計画する。
・作業SOPの準備
・洗浄SOPの準備
・作業者のトレーニング
・予防的メンテナンスの要求事項の準備

注)留意点 1.を参照のこと。

1. SOPやトレーニング、予防的メンテナンスの要求事項の準備は、IQからPQの間で段階的に準備できる。例えば、「作業者のトレーニング」の一部はOQに盛り込める。
(FAT)「予防的メンテナンスの要求事項」は目録の確認をIQに盛り込める。

<参考文献>
PI 006-3 (25 September 2007): RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN , INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION
5. INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION
5.1.4
5.2.2
5.3.7
5.4.3
5.5.3
5.5.4
5.5.5









PQ
3.13

PQ should normally follow the successful completion of IQ and OQ. However, it may in some cases be appropriate to perform it in conjunction with OQ or Process Validation.

Installation Qualification (IQ): The documented verification that the facilities, systems and equipment, as installed or modified, comply with the approved design and the manufacturer's recommendations. (Glossary)

Operational Qualification (OQ): The documented verification that the facilities, systems and equipment, as installed or modified, perform as intended throughout the anticipated operating ranges. (Glossary)

Performance Qualification (PQ): The documented verification that systems and equipment can perform effectively and reproducibly based on the approved process method and product specification. (Glossary)

Process Validation: The documented evidence that the process, operated within established parameters, can perform effectively and reproducibly to produce a medicinal product meeting its predetermined specifications and quality attributes. (Glossary)

PQは通常IQ及びOQの成功裡の終了に次いで実施する。しかし、ある場合にはOQあるいはプロセスバリデーションと併せて実施することが適切な場合もある。

設備据付時適格性評価(IQ):施設、システム及び設備が、据付あるいは改造された状態で、承認された設計及び製造者の推奨事項に適合することを示す文書化された検証。(用語)

運転時適格性評価(OQ):施設、システム及び設備が、据付あるいは改造された状態で、予想される操作範囲において意図された通り稼働することを示す文書化された検証。(用語)

性能適格性評価(PQ):システム及び設備が、承認された加工方法及び製品規格に基づいて効果的かつ再現性をもって稼働し得ることを示す文書化された検証。(用語)

プロセスバリデーション: 工程が、確立されたパラメータの範囲内で、予め定められた規格と品質特性に適合した医薬品を製造するために、効果的かつ再現性を持って稼働し得ることを示す文書化されたエビデンス。(用語)

PQは通常IQ・OQの成功裡の終了に次いで実施するが、OQやプロセスバリデーションと併せて実施することが適切な場合もある(may)。

67

【PQ実施のタイミング】

PQは通常IQ及びOQの成功裡の終了に次いで実施する。

1. PQがOQやプロセスバリデーションと併せて実施することが適切であるとわかるように、URSでは判断基準を明確に記すこと。

2. PQがOQやプロセスバリデーションと併せて実施することが適切であり、PQとして実施しなくて良いということを品質リスクアセスメント等で文書化することが望ましい。

3. バリデーションマスタープランあるいは同等の文書でクオリフィケーション全体の実施概要をまとめること。

68

【PQのOQ/プロセスバリデーションとの統合】

PQはOQやプロセスバリデーションと併せて実施することが適切な場合もある。

(注)留意点 1. 2. 3.を参照のこと。

3.14

PQ should include, but is not limited to the following:

Performance Qualification (PQ):The documented verification that systems and equipment can perform effectively and reproducibly based on the approved process method and product specification. (Glossary)

PQはこれらに限定されないが、以下を含まなければならない。

性能適格性評価(PQ):システム及び設備が、承認された加工方法及び製品規格に基づいて効果的かつ再現性をもって稼働し得ることを示す文書化された検証。(用語)

PQはこれらに限定されないが以下を含むこと;

69

【PQの要件】

PQは、これらに限定されないが、以下を含む。

 

i. Tests, using production materials, qualified substitutes or simulated product proven to have equivalent behavior under normal operating conditions with worst case batch sizes. The frequency of sampling used to confirm process control should be justified;

Simulated agents: A material that closely approximates the physical and, where practical, the chemical characteristics, e.g. viscosity, particle size, pH etc., of the product under validation. (Glossary)

Worst Case: A condition or set of conditions encompassing upper and lower processing limits and circumstances, within standard operating procedures, which pose the greatest chance of product or process failure when compared to ideal conditions. Such conditions do not necessarily induce product or process failure. (Glossary)

i. 製造に使用する原材料、認定された代替品、あるいは類似製品を用いてワーストケースのバッチサイズにて検証を行い、通常の操作条件下で製造されたものと同等の挙動を示すこと検証する。工程が管理されていることを確認するために用いられるサンプリングの頻度について、妥当であることを示すこと;

模擬物質: 例えば粘度、粒子径、pH等の物理学的及び実際に可能な場合化学的特性を、バリデーションを行っている製品に近似させた物質。(用語)

ワーストケース: 標準操作手順内で、理想的な条件と比較して製品あるいは工程の不適合を発生させる機会が最大である、操作条件の上限と下限にわたる一連の条件。そのような条件は必ずしも製品あるいは工程の失敗を引き起こすものではない。(用語)

i. 製造に使用する原材料、認定された代替品、あるいは類似製品(同等の挙動を示すことが証明されたもの)を用いて、ワーストケースのバッチサイズにおいて、通常の操作条件下でテストすること。また、工程管理に用いられるサンプリングの頻度について正当性を示すこと。

70

(注)留意点 1.を参照のこと。

i-1/2. QbD又は技術移転情報に基づき想定したワーストケースのバッチサイズにおいて、URSに規定した原材料、認定された代替品、あるいは類似製品(同等の挙動を示すことが証明されたもの)を用いて、通常の操作条件下(normal operating conditions)で製造できることをテストする。

1. URSには、実際の製造条件下で使用できる操作範囲等が記載されるが、代替品、類似品の検証では、URSに書かれる条件に沿ったものが選択されるべきである。また、QbDや開発段階の知見から導き出される検討内容を追加する場合に有用である。

71

i-2/2. 上記テストにおいて、工程管理のためのサンプリング頻度の正当性も確認する。

 

ii. Tests should cover the operating range of the intended process, unless documented evidence from the development phases confirming the operational ranges is available.

ii. 操作範囲が確認できる開発段階からの文書化された根拠がない限り、意図した工程の操作範囲をカバーした検証を行わなければならない。

ii. 操作範囲を確認した開発段階からの文書化された根拠が利用できない限り、意図した工程の操作範囲を包含したPQテストを行うこと。

72

ii. 操作範囲を設定するにあたり、技術移転資料にある根拠データを利用できない場合にはテスト範囲に含める。

(注)留意点 1.を参照のこと。

1. クオリフィケーションを行う中で変更が等が行われた場合、新たに意図した操作範囲をカバーできるだけの検討が必要となる。

4. RE-QUALIFICATION(適格性再評価)
4.1

Equipment, facilities, utilities and systems should be evaluated at an appropriate frequency to confirm that they remain in a state of control.

State of control: A condition in which the set of controls consistently provides assurance of acceptable process performance and product quality. (Glossary)

設備、施設、ユーティリティ及びシステムは、それらが管理された状態にあることを確認するために、適切な頻度で評価されなければならない。

管理できた状態: 管理の組み合わせが、適合する製造プロセスの稼働性能及び製品品質について恒常的な保証を提供する状態。(用語)

設備、施設、ユーティリティ及びシステムは、それらが管理された状態にあることを確認するために、適切な頻度で評価する。(リクオリフィケーション)

管理できた状態: 管理の組み合わせが、適合する製造プロセスの稼働性能及び製品品質について恒常的な保証を提供する状態。(用語)

(注)留意点 1.を参照のこと。

73

【クオリファイ状態の維持対応(リクオリフィケーションの実施)】

設備、施設、ユーティリティあるいはシステムの使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、クオリファイされた状態(管理できた状態)を維持する。つまり、導入時のクオリフィケーションに加えて、導入後はリクオリフィケーション活動によりクオリファイ状態を恒常的に確保する。

管理できた状態: 管理の組み合わせが、適合する製造プロセスの稼働性能及び製品品質について恒常的な保証を提供する状態。(用語)

(注)留意点 1.を参照のこと。

1. クオリフィケーションの対象を示す際に用いられる用語「設備、施設、ユーティリティあるいはシステム」は、PIC/S GMPガイドライン パートIで用いられている「建物」と「設備」に相当する。

4.2

Where re-qualification is necessary and performed at a specific time period, the period should be justified and the criteria for evaluation defined. Furthermore, the possibility of small changes over time should be assessed.

適格性再評価が必要で、特定の間隔で実施される場合、その間隔は規定された評価基準に従って妥当であることを示さなければならない。更に、時間の経過により発生する可能性がある小さな変更についても評価すること。

リクオリフィケーションが必要で特定の間隔で実施される場合、その間隔を正当化し、その評価基準を規定すること。また、経時変化の可能性についてもアセスメントすること。

74

【リクオリフィケーションの要件】

リクオリフィケーションを計画する際、次の要件を満たす。
- リクオリフィケーションの間隔を正当化すること
- リクオリフィケーションの評価基準を規定すること

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

1. 下記文献では、「設備の改造又は移設は、変更管理手順に従って文書化された変更提案書が十分にレビューされ承認された後にのみ行うこと。レビューの手順に、機器のリクオリフィケーションの検討を含めること。軽微な変更又は製品品質に直接影響を与えない変更は、予防的メンテナンスプログラムの文書化システムに則って取り扱うこと」と、記述されている。リクオリフィケーションを計画する際の指針になる。

<参考文献>
PI 006-3 (25 September 2007): RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN , INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION
5. INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION
5.6.1

2. 下記文献では、「理論上、バリデーションは任意のプロセスに対して一度だけ実施すればよい。しかし、実際、プロセスが変化しないということはほぼありえない。構成成分(原料及び包装材)の変更や、設備の変更などが発生するため、プロセスの環境が初回バリデーション以降変化しないとは考えにくい。定期的な再バリデーションのプログラムが不可欠である」と、記述されている。この視点は、リクオリフィケーションを計画する際にも参考になる。

<参考文献>
PI 006-3 (25 September 2007): RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN , INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION
6. NON-STERILE PROCESS VALIDATION
6.2.3

75

【経時変化への対応】

クオリフィケーションを計画する際、更に経時変化の可能性についてもアセスメントする。

5. PROCESS VALIDATION(プロセスバリデーション)
(5章 5.1〜5.8は非該当のため削除)



5.9

Equipment, facilities, utilities and systems used for process validation should be qualified. Test methods should be validated for their intended use.

Process Validation: The documented evidence that the process, operated within established parameters, can perform effectively and reproducibly to produce a medicinal product meeting its predetermined specifications and quality attributes. (Glossary)

プロセスバリデーションに使用される設備、施設、ユーティリティ及びシステムは適格性評価がされているものであること。試験方法は意図した用途に関してバリデートされていなければならない。

プロセスバリデーション: 工程が、確立されたパラメータの範囲内で、予め定められた規格と品質特性に適合した医薬品を製造するために、効果的かつ再現性を持って稼働し得ることを示す文書化されたエビデンス。(用語)

プロセスバリデーションに使用される設備、施設、ユーティリティ及びシステムに関してクオリフィケーションを行うこと。

(注)留意点 1.を参照のこと。

76

【URS対象範囲の絞り込み】

プロセスバリデーションに使用される構造設備(建物と設備、ユーティリティを含む)の要求仕様を、クオリフィケーションの基点となるよう具体的に記載する。

(注)留意点 1.を参照のこと。

【クオリフィケーション対象範囲の絞り込み】

プロセスバリデーションに使用される構造設備(建物と設備、ユーティリティを含む)について、URSに基づきクオリフィケーションを実施する。

(注)留意点 1.を参照のこと。

1. クオリフィケーションの対象を示す際に用いられる用語「設備、施設、ユーティリティあるいはシステム」は、PIC/S GMPガイドライン パートIで用いられている「建物」と「設備」に相当する。

(5章 5.10 〜 6章 6.4は非該当のため削除)
7. VALIDATION OF PACKAGING(包装バリデーション)
7.1

Variation in equipment processing parameters especially during primary packaging may have a significant impact on the integrity and correct functioning of the pack, e.g. blister strips, sachets and sterile components; therefore primary and secondary packaging equipment for finished and bulk products should be qualified.

特に1次包装の過程での設備の運転パラメータの変動は包装、例えばブリスター包装、分包袋、及び無菌包装、の完全性と正しい機能に対して重要な影響があり得る;従って、最終製品及びバルク製品の1次包装及び2次包装設備は適格性評価を行わなければならない。

最終製品及びバルク製品の1次包装及び2次包装の設備についてクオリフィケーションを行うこと。

記:特に1次包装の過程での設備運転パラメータの変動は、包装(例えば、ブリスター包装、分包袋、無菌包装)の機能に対して重要な影響がある。

(注)留意点 1.を参照のこと。

77

【包装設備:要求仕様の記載】

品質リスクアセスメントに基づき、 最終製品及びバルク製品の1次包装及び2次包装のクオリフィケーション対象となる機能記)とこれら要求仕様(例:プロセス要件、GMP要件、品質特性等)を、クオリフィケーションの基点となるよう具体的に記載する。

記:例えば、1次包装(ブリスター包装や分包包装、無菌包装等)設備の運転パラメータは重要。

(注)留意点 1.を参照のこと。

【包装設備:クオリフィケーションの計画と実施】

最終製品及びバルク製品の1次包装設備及び2次包装設備のクオリフィケーションをURSに基づき実施する。クオリフィケーションの実施計画段階では、設計に対して品質リスクアセスメントを実施し、品質リスクに応じたクオリフィケーション実施計画書を策定する。

(注)留意点 1.を参照のこと。

1. 「最終製品」と「バルク製品」は、PE 009-17 (25 August 2023): Annexes の GLOSSARY(用語集)に次のように定義されている。

Finished product: A medicinal products which has undergone all stages of production, including packaging in its final container.
最終製品とは最終容器に包装された製品をいう。

Bulk Product: Any product which has completed all processing stages up to, but not including, final packaging.
バルク製品とは最終包装される前の製品をいう。
(参考訳/厚労省訳無し)

7.2

Qualification of the equipment used for primary packing should be carried out at the minimum and maximum operating ranges defined for the critical process parameters such as temperature, machine speed and sealing pressure or for any other factors.

1次包装に使用する設備のクオリフィケーションは、温度、機械の運転速度、封止圧、あるいはその他の要因 等の重要な工程パラメータについて規定した最小及び最大操作範囲について実施しなければならない。

1次包装設備のクオリフィケーションは、重要工程パラメータ(温度、機械の運転速度、封止圧、その他の要因 等)に関して規定した最小/最大操作範囲について実施する。

78

【1次包装設備:包装設備環境の記載】

1次包装する対象製品の品質を保持するための環境温湿度等の規定値を記載する。

【1次包装設備:包装設備環境の確認】

試運転調整済み又はクオリフィケーション済みの設備稼動環境(温度、湿度等)において、クオリフィケーションを実施する。試運転調整済みの場合は、当該クオリフィケーションにおいて、設備稼働環境をモニタリングし、設備稼働環境が要求仕様を満足することを確認する。クオリフィケーション実施済みであれば、該当するクオリフィケーション実施記録の文書番号を記録する。

 

79

【1次包装設備:包装仕様の記載】

1次包装の材質や形状・寸法・厚さなど、包装設備を設計するために必要な情報を過不足なく記載する。

【1次包装設備:包装仕様の確認】

URSに記載された包装品質に適合していることを確認し、記録する。

80

【1次包装設備:重要工程パラメータ(上下限値)の記載】

1次包装設備の重要工程パラメータ(運転速度、連続稼働時間、品種切替え数など)の上下限値を過不足なく記載する。

【1次包装設備:重要工程パラメータ(上下限値)の確認】

1次包装設備の温度、運転速度、封止圧、あるいはその他の要因(連続稼働時間、品種切替え)等の重要な工程パラメータについて規定した最小及び最大操作範囲についてクオリフィケーションを実施する。実施パターンは、重要な工程パラメータ数の全組合わせ×2(最小、最大)が現実的に実施できない場合は実験計画法などを用いて実施パターンを決定する。

81

【1次包装設備:包装仕様の確認方法と判定基準の記載】

1次包装設備の包装品質を評価するための確認方法(専用器具が必要か否かも含めて)と評価基準が分かるように記載する。

【1次包装設備:包装仕様の確認方法と判定基準の記載】

1次包装設備の包装品質を評価するための確認方法(専用器具が必要か否かも含めて)と評価基準が分かるように、クオリフィケーション実施計画書に記載する。

8. QUALIFICATION OF UTILITIES(ユーティリティのクオリフィケーション)
8.1

The quality of steam, water, air, other gases etc. should be confirmed following installation using the qualification steps described in section 3 above.

蒸気、水、空気その他のガス類の質を、設置の後に上記3章に記載されているクオリフィケーションにより確認しなければならない。

設置後のクオリフィケーションにより、蒸気、水、空気その他のガス類の品質を確認すること。

82

【ユーティリティ:ユーティリティ品質の記載】

プロセスバリデーションに使用されるユーティリティ(蒸気、水、空気、ガス)の品質条件を記載する。必要に応じ、適用国の局方やISOなどの国際機構で規定された品質基準、試験方法を引用する。

(注)留意点 1.を参照のこと。

【ユーティリティ:ユーティリティ品質の確認】

.設置後のクオリフィケーションにおいて、 製造/供給される蒸気、水、空気、ガスの品質が左記URSに記載の品質条件を満たすことを、局方やISOなどの国際機構等で規定された試験方法で確認する。

(注)留意点 2.を参照のこと。

1. URSには、ユーティリティの品質条件を満たすために必要なハード/ソフト要件を記載すること。必要に応じ、適用国や各種機構、協会などの蒸気、水、空気、ガスの製造/供給設備に関するガイドラインに記載の要件を引用すること。

2. 蒸気、水、空気、ガスの製造/供給設備がURSに記載の要件通りであることをクオリフィケーションの各フェーズで確認すること。ユーティリティの品質確認については、設置後のクオリフィケーションで確認すること。必要に応じ、引用したガイドラインの試験方法を用いて検証できる。

8.2

The period and extent of qualification should reflect any seasonal variations, if applicable, and the intended use of the utility.

クオリフィケーションの期間と範囲は該当する場合は季節変動を反映し、ユーティリティの意図した用途を反映したものでなければならない。

 

83

【ユーティリティ:季節変動の反映】

ユーティリティについて、季節変動(気温、湿度、日射、気圧、降雨、積雪、風等)を想定し、品質リスクアセスメントに基づきURSに反映する。

【ユーティリティのクオリフィケーション:季節変動の反映】

ユーティリティは設置後のクオリフィケーションにおいて、URSに反映した季節変動(気温、湿度、日射、気圧、降雨、積雪、風等)に対応した以下の内容を確認する。リクオリフィケーションとして確認する内容については、リクオリフィケーションへの申し送りを行う。
1. ユーティリティ 設備の機構及び機能
2. 当該クオリフィケーション実施時期の季節に対応した期間と範囲の確認
3. 2項の代替手法として、確認可能な方法によるユーティリティ設備の性能確認

ユーティリティのクオリフィケーション実施記録では、コミッショニングにおける下記文書を参照する。
- 季節変動を示すデータを記載した文書
- ユーティリティの要求条件を記載した文書 (ユーティリティ系統図、ユーティリティ設備のレイアウト等)
- ユーティリティ機器の立会検査等でのテスト結果を記録した文書
- ユーティリティ機器の(設計)特性曲線を記載した文書

1. ユーテリティについては、ユーテリティ装置とユースポイントの距離が開くことがある為、ユーティリティの境界(B/L(Battery Limit))を明確にしておく必要がある。

2. ユーティリティの設計では、供給途中での変動(損失等)も考慮しておく必要がある。

84

【ユーティリティのリクオリフィケーション:季節変動の反映】

設備の性能に関するリクオリフィケーションの期間と範囲については、① リクオリフィケーションの実施時期、② 設備の性能に影響する季節変動の内容、③ 設備の運転の内容を考慮して決定する。季節変動の条件を設備の運転環境で実現出来ない場合は、代替出来る他の方法で検証し記録に残しておく。次のリクオリフィケーションへの申し送りを行う。

85

【ユーティリティ:ユーティリティ供給条件の記載】

ユーティリティのURSにおいて、ユーティリティの供給条件を示す。

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

【ユーティリティのクオリフィケーション:使用用途の反映】

ユーティリティは設置後のクオリフィケーションにおいて、ユースポイントの使用時間帯と使用量、使用範囲(最小値〜最大値等)及びユーティリティの同時使用パターンを考慮して、期間と範囲、方法を決定する。ユーティリティのクオリフィケーション実施記録では、使用用途(使用条件、例:チラー使用量WW、熱負荷XXX)において、要求条件(範囲、最小値〜最大値等、例:チラー温度YYY、圧力XXX)が維持し続けられることを確認し、実施記録に残す。リクオリフィケーションとして確認する内容については、リクオリフィケーションへの申し送りを行う。

ユーティリティのクオリフィケーション実施記録では、コミッショニングにおける下記文書を参照する。
- ユーティリティの要求条件を記載した文書 (ユーティリティ系統図、ユーティリティ設備のレイアウト等)
- ユーティリティ機器の立会検査等でのテスト結果を記録した文書
- ユーティリティ機器の(設計)特性曲線を記載した文書

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

86

【ユーティリティのリクオリフィケーション:使用用途の反映】

設備の性能に関するリクオリフィケーションの期間と範囲については、クオリフィケーションからの申し送り事項とユースポイントの使用状況を考慮して計画する。次のリクオリフィケーションへの申し送りを行う。

87

【ユーティリティ供給先の設備:ユーティリティ要求仕様の記載】

ユーティリティの供給を受ける設備のURSにおいて、ユーティリティの要求仕様を盛り込む。

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

【ユーティリティの供給を受ける設備のクオリフィケーション:ユーティリティ要求仕様の確認】

ユーティリティの供給を受ける設備のクオリフィケーションでは、要求を満たすユーティリティが供給されていることを確認する。

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

88

【ユーティリティ供給先のリクオリフィケーション:ユーティリティ要求仕様の確認】

ユーティリティの供給を受ける設備のリクオリフィケーションでは、クオリフィケーションからの申し送り事項とユースポイントの使用状況を考慮して計画する。次のリクオリフィケーションへの申し送りを行う。

8.3

A risk assessment should be carried out where there may be direct contact with the product, e.g. heating, ventilation and air-conditioning (HVAC) systems, or indirect contact such as through heat exchangers to mitigate any risks of failure.

空調システム(HVAC)のような製品直接接触の場合、あるいは熱交換器を通じた間接接触の場合において、故障のリスクを低減するためにリスク評価を行わなければならない。

製品に直接接触する可能性がある場合(例:空調システム)や間接接触の場合(例:熱交換器など)には、あらゆる故障リスクを低減するために品質リスクアセスメントを行うこと。

89

【ユーティリティ:製品に直接/間接接触する可能性がある場合の記載】

ユーティリティが製品への直接/間接接触の可能性がある場合、品質リスクアセスメントにおいて評価した欠陥リスクに応じて、URSの内容を記載する。

【ユーティリティ:製品に直接/間接接触する可能性がある場合の確認】

ユーティリティが製品への直接/間接接触の可能性がある場合、クオリフィケーション実施計画書を作成時の品質リスクアセスメントにおいて、ユーティリティ設備の欠陥リスクに応じて、クオリフィケーションの実施範囲と方法を設定する。

 

9. VALIDATION OF TEST METHODS(試験法バリデーション)
9.1

All analytical test methods used in qualification, validation or cleaning exercises should be validated with an appropriate detection and quantification limit, where necessary, as defined in Chapter 6 of the PIC/S GMP guide Part I.

クオリフィケーション、バリデーション、あるいは洗浄試験で使用されるすべての分析試験法は、必要な場合は適切な検出限界及び定量限界を含めて、PIC/SのGMPガイドパートIの6章の規定に従ってバリデートしなければならない。

クオリフィケーションで使用される分析試験法は全て、PIC/SのGMPガイドパートⅠの第6章「品質管理」の規定に従って、適切な検出限界・定量限界(必要に応じて)と共にバリデートすること。

90

【クオリフィケーション/リクオリフィケーションで採用する分析試験法 - バリデーションの要件 - 】

バリデーションマスタープランあるいは同等の文書にて、クオリフィケーション/リクオリフィケーションで採用する各分析試験法のバリデーション文書番号を記載する。クオリフィケーション/リクオリフィケーション実施計画書又はトレーサビリティマトリクスにおいて、個別の分析試験法のバリデーション文書番号を参照する。なお、当該バリデーションはPIC/SのGMPガイドパートⅠの第6章「品質管理」の規定に従う。

 

(9章 9.2 〜 10章 10.15は非該当のため削除)
11. CHANGE CONTROL(変更管理)
11.1

The control of change is an important part of knowledge management and should be handled within the pharmaceutical quality system.

Change Control: A formal system by which qualified representatives of appropriate disciplines review proposed or actual changes that might affect the validated status of facilities, systems, equipment or processes. The intent is to determine the need for action to ensure and document that the system is maintained in a validated state. (Glossary)

Knowledge management: A systematic approach to acquire, analyse, store and disseminate information. (ICHQ10) (Glossary)

変更の管理知識管理の重要な部分であり、医薬品質システムの中で取り扱われなければならない。

変更管理: 施設、システム、設備あるいは工程のバリデートされた状態に影響する可能性があるような、提案されたかあるいは実際の変更について、適切な部門の適格な代表者が照査を行う正式のシステム。意図するところは、システムがバリデートされた状態を維持することを確実にし、文書化するためにアクションが必要か否かを決定することである。(用語)

知識管理: 情報を獲得し、分析し、保管し、及び伝播するための体系的取り組み。(ICH Q10) (用語)

変更管理(Change Control)は、情報を獲得・分析・保管・伝播するための体系的な取り組み(知識管理:Knowledge Management)であり、医薬品質システムの中で運用すること。

変更管理: 施設、システム、設備あるいは工程のバリデートされた状態に影響する可能性があるような、提案されたかあるいは実際の変更について、適切な部門の適格な代表者が照査を行う正式のシステム。意図するところは、システムがバリデートされた状態を維持することを確実にし、文書化するためにアクションが必要か否かを決定することである。(用語)

知識管理: 情報を獲得し、分析し、保管し、及び伝播するための体系的取り組み。(ICH Q10) (用語)

91

【変更管理の一般原則】

URSは構造設備の使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、医薬品品質システムにおいてURSの変更を管理する。この変更管理(構造設備の導入時、設計/コミッショニング段階における変更については、下欄記載の”変更マネジメント”による)により構造設備がクオリファイされた状態を維持することを確実にする。URSの変更管理フローは次の通り。

1) 変更管理の体制化
次の内容に考慮して、変更管理手順を規定したSOPを整える。
- 医薬品品質システムの責任体制の元、変更管理の体制を敷く。
- 所要の薬事規制上の届出又は承認を考慮する。
- URSの変更履歴を品質リスクアセスメント記録と変更後の評価記録と共に追えるよう、URSに変更履歴を記載しバージョン管理を実施する。

2) 変更の起案
変更の起案時に品質リスクアセスメントを行い、クオリファイ状態他(製品品質、医薬品品質システム、 文書化、バリデーション、薬事上の現状、校正、保守及びその他のシステム)に対して、変更の潜在的な影響 を特定し、品質リスクが受容範囲内にあることを確認する。

3) 変更による影響を立証する裏付けデータの照査
変更に伴い想定したクオリファイ状態他(製品品質、医薬品品質システム、文書化、バリデーション、薬事上の現状、校正、保守及びその他のシステムに対して)への影響を立証する裏付けデータ(例:文書のコピー、品質アセスメント記録)を照査する。

4) 変更承認
変更を承認する。

5) 変更後の評価
変更が成功したことを確認するために、変更の有効性を評価する。(必要に応じて)

6) URSの旧版とともに変更管理記録の一式を必要期間保管する。

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

【クオリフィケーション/リクオリフィケーション文書:変更管理の一般原則】

クオリフィケーション/リクオリフィケーション計画書/実施記録書/報告書は、構造設備の使用が終了するまで、あるいは当該製造工程の使用が終わるまで、医薬品品質システムにおいて変更を管理する。この変更管理(構造設備の導入時、設計/コミッショニング段階における変更管理については、下欄記載の”変更マネジメント”による)により構造設備がクオリファイされた状態を維持することを確実にする。クオリフィケーション/リクオリフィケーション文書の変更管理フローは次の通り。

1) 変更管理の体制化
次の内容に考慮して、変更管理手順を規定したSOPを整える。
- 医薬品品質システムの責任体制の元、変更管理の体制を敷く。
- 所要の薬事規制上の届出又は承認を考慮する。
- URSの変更履歴を品質リスクアセスメント記録と変更後の評価記録と共に追えるよう、クオリフィケーション/リクオリフィケーション文書に変更履歴を記載しバージョン管理を実施する。

2) 変更の起案
変更の起案時に品質リスクアセスメントを行い、クオリファイ状態他(製品品質、医薬品品質システム、 文書化、バリデーション、薬事上の現状、校正、保守及びその他のシステム)に対して、変更の潜在的な影響 を特定し、品質リスクが受容水準にあることを確認する。

3) 変更による影響を立証する裏付けデータの照査
変更に伴い想定したクオリファイ状態他(製品品質、医薬品品質システム、文書化、バリデーション、薬事上の現状、校正、保守及びその他のシステムに対して)への影響を立証する裏付けデータ(例:文書のコピー、品質アセスメント記録)を照査する。

4) 変更承認
変更を承認する。

5) 変更後の評価
変更が成功したことを確認するために、変更の有効性を評価する。(必要に応じて)

6) クオリフィケーション/リクオリフィケーション文書の旧版とともに変更管理記録の一式を必要期間保管する。

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

1. 構造設備のライフサイクルでは、構造設備の老朽化や品目の追加、ロットスケールの拡大/縮小に伴う等の変更が生じる。いずにしても、目的とする品質の製品が恒常的に製造されていることを保証するため、都度URSを変更しリクオリフィケーションを実施すること。その変更管理の妥当性は医薬品品質システムの責任体制の基で承認することによる。

2. クオリフィケーション/リクオリフィケーションに関する変更管理については次の資料を参照のこと。
PI 006-3 (25 September 2007): RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN , INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION
2. INTRODUCTION
2.6.1
2.6.2
4. VALIDATION MASTER PLAN
4.5.2.10
5. INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION
5.4.4
6. NON-STERILE PROCESS VALIDATION
6.7.1

3. 「変更マネジメント」は、PI 006-3 (25 September 2007):
RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN , INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION の 8. GLOSSARY に次のように定義されている。

Change Management
A less formal approach to change control that is generally utilised during the preliminary planning and design stage of a project. (Many companies will elect to move straight to a change control system in a design stage of a complex project. This has the advantage of formality, more accurate records and documentation as well as a strong traceability and accountability feature).

変更マネジメント
一般的にプロジェクトの初期計画と設計段階で用いられる、変更管理ほど形式度が高くないアプローチ(多くの企業は複雑なプロジェクトの設計段階で、変更管理システムへの直接移行を選択している。このほうが、トレーサビリティと責任体制の強力な機能だけでなく、形式化と、より正確な記録と文書化いう利点がある)
(参考訳/厚労省訳無し)

4. コミッショニングとクオリフィケーションについて
コミッショニングは通常、装置メーカーやベンダー等が設備工事を行う際に、設備の引渡し条件を確保するために実施する施工検査であり、クオリフィケーションは医薬品製造会社が、その設備を使って要求する品質の医薬品が製造可能なのかを検査(合否判定)する活動である。一般的には医薬品製造会社が製品品質を考慮して、装置メーカーやベンダー等のコミッショニングを必要な程度コントロールし、その結果に基づきクオリフィケーションを実施している。従って、コミッショニングとクオリフィケーションの連携が重要となる。

5. 「コミッショニング」は、PI 006-3 (25 September 2007):
RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN , INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION の 8. GLOSSARY に次のように定義されている。

Commissioning
""An engineering term that covers all aspects of bringing a system or sub-system to a position where it is regarded as being ready for use in pharmaceutical manufacture. Commissioning involves all the basis requirements of Installation Qualification (IQ) and Operational Qualification (OQ).""

コミッショニング
エンジニアリング用語であり、システムやサブシステムを医薬品製造に使用できる状態にするためのあらゆる側面を包含する。コミッショニングには、IQ及びOQの基礎的要求事項がすべて含まれる。(参考訳/厚労省訳無し)

6. URSは構造設備導入時のプロジェクトの進捗に応じて設計とともに段階的に構築される。また運用時においては、構造設備のライフサイクルにわたる知識の深化とともに改訂管理される。

92

【構造設備の導入段階における変更マネジメント】

構造設備の導入段階では、設計/コミッショニングの進捗に応じてURSを段階的に構築する時期になるため、URSの変更は上記【変更管理の一般原則】の要件を満足させるだけでなく、設計/コミッショニングにも適した変更マネジメントシステム(柔軟性と容易性を考慮しながらも、クオリファイ状態を確保する)をプロジェクトに応じて構築する。

(注)留意点 1. 2. 3. 4. 5. 6.を参照のこと。

【クオリフィケーション文書:構造設備の導入段階における変更マネジメント】

構造設備の導入段階では、設計/コミッショニングの進捗に応じてクオリフィケーション計画書/実施記録書/報告書を段階的に構築する時期になるため、クオリフィケーション計画書/実施記録書/報告書の変更は上記【変更管理の一般原則】の要件を満足させるだけでなく、設計/コミッショニングにも適した変更マネジメントシステム(柔軟性と容易性を考慮しながらも、クオリファイ状態を確保する)をプロジェクトに応じて構築する。

(注)留意点 1. 2. 3. 4. 5. 6.を参照のこと。

93

【運用段階における変更管理】

構造設備がクオリファイされた状態を維持管理する運用段階では、上記【変更管理の一般原則】に記載した変更管理を適用する。変更マネジメントシステムから変更管理システムへの移行のタイミングは、プロセスバリデーションへの移行前の、下記条件を満たした時期とする。
1) クオリフィケーション活動はURSを起点にしている。
2) URSとクオリフィケーション文書は、設置された状態を正確に反映している。
3) 当該構造設備のクオリフィケーションは全て完了し、医薬品品質システムの責任体制の元、承認されている。

(注)留意点 1. 2. 6.を参照のこと。

【リクオリフィケーション文書:運用段階における変更管理】

構造設備がクオリファイされた状態を維持管理する運用段階では、上記【変更管理の一般原則】に記載した変更管理を適用する必要がある。変更マネジメントシステムから変更管理システムへの移行のタイミングは、プロセスバリデーションへの移行前の、下記条件を満たした時期とする。
1) クオリフィケーション活動はURSを起点にしている。
2) URSとクオリフィケーション文書は、設置された状態を正確に反映している。
3) 当該構造設備のクオリフィケーションは全て完了し、医薬品品質システムの責任体制の元、承認されている。

(注)留意点 1. 2.を参照のこと。

11.2

Written procedures should be in place to describe the actions to be taken if a planned change is proposed to a starting material, product component, process, equipment, premises, product range, method of production or testing, batch size, design space or any other change during the lifecycle that may affect product quality or reproducibility.

Design Space: The multidimensional combination and interaction of input variables, e.g. Material attributes, and process parameters that have been demonstrated to provide assurance of quality. Working within the design space is not considered as a change. Movement out of the design space is considered to be a change and would normally initiate a regulatory post approval change process. Design space is proposed by the applicant and is subject to regulatory assessment and approval. (ICH Q8) (Glossary)

Lifecycle: All phases in the life of a product, equipment or facility from initial development or use through to discontinuation of use. (Glossary)

計画された変更が、出発物質、製品構成成分、工程、設備、施設、製品範囲、製造方法あるいは試験方法、バッチサイズ、デザインスペースあるいは製品品質あるいは再現性に影響するような変更が製品ライフサイクルの過程で提案された場合、とるべきアクションが記載された文書化された手順がなければならない。

デザインスペース: 品質を確保することが立証されている入力変数、例えば原材料の性質及び工程パラメータ、の多元的な組み合わせと相互作用。このデザインスペース内で運用することは変更とはみなされない。デザインスペース外への移動は変更とみなされ、通常は承認事項一部変更のための規制手続きが開始されることになる。デザインスペースは申請者が提案し、規制当局がその評価を行って承認する。(ICH Q8) (用語)

ライフサイクル: 初期開発あるいは使用開始から使用中止に至るまでの製品、設備又は施設の寿命における全ての段階。(用語)

下記変更時の手順を規定したSOPを整えること。

- 出発物質、製品構成成分、工程、設備、製品範囲、製造/試験方法、バッチサイズ、デザインスペースへの変更
- 製品品質/再現性に影響するようなライフサイクルに係る様々な変更

94

【変更管理手順を規定したSOPの作成】

URSの変更手順を規定したSOPを作成し、医薬品品質システムの責任体制の元に承認する。

【クオリフィケーション/リクオリフィケーション文書:変更管理手順を規定したSOPの作成】

クオリフィケーション/リクオリフィケーション計画書/実施記録書/報告書の変更手順を規定したSOPを作成し、医薬品品質システムの責任体制の元に承認する。

1. クオリフィケーション/リクオリフィケーションに関する変更管理については次の資料を参照のこと。
PI 006-3 (25 September 2007): RECOMMENDATIONS ON VALIDATION MASTER PLAN , INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION, NON-STERILE PROCESS VALIDATION, CLEANING VALIDATION
2. INTRODUCTION
2.6.1
2.6.2
4. VALIDATION MASTER PLAN
4.5.2.10
5. INSTALLATION AND OPERATIONAL QUALIFICATION
5.4.4
6. NON-STERILE PROCESS VALIDATION
6.7.1

(11章 11.3は非該当のため削除)
11.4

Quality risk management should be used to evaluate planned changes to determine the potential impact on product quality, pharmaceutical quality systems, documentation, validation, regulatory status, calibration, maintenance and on any other system to avoid unintended consequences and to plan for any necessary process validation, verification or requalification efforts.

Quality risk management: A systematic process for the assessment, control, communication and review of risks to quality across the lifecycle. (ICH Q9) (Glossary)

Lifecycle: All phases in the life of a product, equipment or facility from initial development or use through to discontinuation of use. (Glossary)

Process Validation: The documented evidence that the process, operated within established parameters, can perform effectively and reproducibly to produce a medicinal product meeting its predetermined specifications and quality attributes. (Glossary)

計画された変更について、製品品質、医薬品質システム、文書化、バリデーション、薬事上の現状、キャリブレーション、メンテナンス、及び他のいかなるシステムにおいても、予期しない結果を避け、必要なプロセスバリデーション、ベリフィケーションあるいは再適格性評価等の業務を計画するために品質リスク管理を用いること。

品質リスクマネジメントライフサイクルにわたる品質に対するリスクのアセスメント、コントロール、コミュニケーション、レビューに対する系統だったプロセス。(ICH Q9) (用語)

ライフサイクル: 初期開発あるいは使用開始から使用中止に至るまでの製品、設備又は施設の寿命における全ての段階。(用語)

プロセスバリデーション: 工程が、確立されたパラメータの範囲内で、予め定められた規格と品質特性に適合した医薬品を製造するために、効果的かつ再現性を持って稼働し得ることを示す文書化されたエビデンス。(用語)

変更の計画時の評価には品質リスクマネジメントを適用すること。品質リスクマネジメントを適用する目的は次の通り

- 製品品質、医薬品品質システム、文書化、バリデーション、薬事上の現状、校正、保守及びその他のシステムに対して、変更の潜在的な影響を特定し、予期せぬ結果を回避する。

95

【変更計画時、品質リスクマネジメントを適用した評価】

URSの変更計画時の評価には、クオリファイ状態他(製品品質、医薬品品質システム、文書化、バリデーション、薬事上の現状、校正、保守及びその他のシステム)に対して、変更の潜在的な影響を特定し、予期せぬ結果を回避するために、品質リスクマネジメントを適用する。

【クオリフィケーション/リクオリフィケーション文書 変更計画時:品質リスクマネジメントを適用した評価】

クオリフィケーション/リクオリフィケーション計画書/実施記録書/報告書の変更計画時の評価では、クオリファイ状態他(製品品質、医薬品品質システム、文書化、バリデーション、薬事上の現状、校正、保守及びその他のシステム)に対して、変更の潜在的な影響を特定し、予期せぬ結果を回避するために、品質リスクマネジメントを適用する。

 

11.5

Changes should be authorized and approved by the responsible persons or relevant functional personnel in accordance with the pharmaceutical quality system.

変更は、医薬品質システムに従って、責任者あるいは関連する組織機能を持った従業員により、オーソライズされ、承認されなければならない。

医薬品質システムに従って、責任者あるいは関連する組織機能を持った従業員により変更の許可を与え、承認すること。

96

【医薬品品質システムの責任体制に基づく変更承認】

URS変更の承認者は、医薬品質システムの承認体制に基づく。

【クオリフィケーション/リクオリフィケーション文書:医薬品品質システムの責任体制に基づく変更承認】

クオリフィケーション/リクオリフィケーション計画書/実施記録書/報告書の変更の承認者は、医薬品質システムの承認体制に基づく。

 

11.6

Supporting data, e.g. copies of documents, should be reviewed to confirm that the impact of the change has been demonstrated prior to final approval.

裏付けデータ、即ち文書のコピーは、最終承認に先立って、変更の影響が立証されているということを確認するために照査されなければならない。

計画時に想定した変更に伴う影響が立証されていることを確認するために、変更の最終承認に先立って裏付けデータ(例:文書のコピー)を照査すること。

97

【変更承認前、変更による影響を立証する裏付けデータの照査】

URS変更の最終承認前には、変更に伴い想定したクオリファイ状態他(製品品質、医薬品品質システム、文書化、バリデーション、薬事上の現状、校正、保守及びその他のシステムに対して)への影響を立証する裏付けデータ(例:文書のコピー)を照査する。

【クオリフィケーション/リクオリフィケーション文書 変更承認前:変更による影響を立証する裏付けデータの照査】

クオリフィケーション/リクオリフィケーション計画書/実施記録書/報告書の変更の最終承認前には、変更に伴い想定したクオリファイ状態他(製品品質、医薬品品質システム、文書化、バリデーション、薬事上の現状、校正、保守及びその他のシステムに対して)への影響を立証する裏付けデータ(例:文書のコピー)を照査する。

 

11.7

Following implementation, and where appropriate, an evaluation of the effectiveness of change should be carried out to confirm that the change has been successful.

適切な場合、変更が成功したことを確認するため、変更の実施の後に変更の有効性の評価を行うこと。

変更が成功したことを確認するために、必要に応じて、変更後に変更の有効性を評価すること。

98

【変更承認後、変更の有効性評価(必要に応じて)】

URSの変更承認後、変更が成功(クオリファイ状態の確保)したことを確認するために、必要に応じて、変更の有効性を評価する。

【クオリフィケーション/リクオリフィケーション文書 変更承認後:変更の有効性評価(必要に応じて)】

クオリフィケーション/リクオリフィケーション計画書/実施記録書/報告書の変更承認後、変更が成功(クオリファイ状態の確保)したことを確認するために、必要に応じて、変更の有効性を評価する。