製剤機械技術学会誌　第134号

昨今、医薬品の供給不安が続いている。背景には様々な要因があるが、サプライチェーンの複雑化は、その一因である。製薬企業では、従前に比べ取扱品目は大幅に増え、また自社生産から製造委託への切り替えが進んでいる。原料や原薬の調達先は海外への切り替えが進み、サプライチェーンは急激にグローバル化している。サプライチェーンの複雑化が進み、急速にサプライチェーンは見えづらくなった。この結果、サプライチェーン管理においては、①サプライチェーンに関する情報が正しく管理されていない、②リスク検知と有事対応が人海戦術となっている、③サプライチェーン上流の情報収集が困難、という3 つの課題が生じている。これらを解決するのがレジリアのシステムである。レジリアは、サプライチェーンを見える化し、高度に複雑化したサプライチェーン管理業務を支援する。レジリアは2024 年5 月現在、20 社を超える製薬企業で導入されており、各社の安定供給の取組みを支援している。

医薬品製造工程の能動的な生産コントロールのための生産状況の収集や、偶発的な規格外品排除のため、全数を対象にした検査装置による計測が一般化している。本報告は現在当社が取組んでいる透過式の近赤外吸収スペクトル測定法（NIR）を用い非破壊で成分量・クロスコンタミネーション・異物混入検査の全数検査を可能とした検査装置の動作原理と計測技術を紹介する。

凍結乾燥（フリーズドライ）は様々な熱に敏感で不安定な水分を多く含む原料を乾燥させる効果的な技術として古くから使用されており、対象物を凍結し昇華により乾燥する方法である。医薬品分野では低温で内容物を乾燥させられる技術であることから、主に熱に不安定な薬物・製剤の安定化を目的として使用される。当社では2021 年よりドイツMERIDION 社の球形凍結乾燥顆粒製造システムの取り扱いを開始した。本システムは凍結プロセスを担う連続滴下凍結装置「SprayCon」、乾燥プロセスを担うドラム回転式凍結乾燥装置「LyoMotion」の二種の装置にて構成され、数百μm の流動性の良好な凍結乾燥バルク品を製造できる。本システムは無菌製造への対応も可能であり、また今後の更なる展開として無菌製剤の連続製造への適用にも期待ができる。本システムの特徴やアプリケーション事例について紹介する。

当社では、老朽化した既存工場・設備の更新および国内拠点の集約を目的として、2015 年に大阪の本社／工場および埼玉の工場を兵庫県の淡路島に移転統合し、新たな本社／工場としてオープンさせている。新たな本社／工場は、モノづくりの現場の「見せる化」に重点を置き、当社の企業理念にも掲げる「安心　信頼　驚き　感動」を伝えるための発信拠点としても積極的に活用している。今回、社員寮も併設しワークライフバランスを重視した取り組みも含め紹介する。