製剤機械技術学会誌　第135号

機能性微粒子に関する粒子設計という概念は、最終製剤が固形製剤であることが多い医薬品産業のみならず、健康食品あるいは保健機能食品の製品化においても大きな関心が寄せられている。国民の平均寿命の飛躍的延長に伴う医療費問題は喫緊の課題となっており、医療費削減の一つとして、軽度な身体の不調は自分で手当てする、セルフメディケーション政策を推進している。そのため、機能性を謳った食品開発市場は活発化し、新規の機能性表示食品やその他の健康食品サプリメントの開発需要はますます増大することが予想される。本稿では、噴霧乾燥法や湿式粉砕法など従来から汎用され、すでに技術が確立された装置を如何にして有効活用して、次世代に要求される機能性粉末を調製するのかについて、筆者らが行ってきたいくつかの事例について紹介する。

【Abstract】
The concept of particle design for functional microparticles is of great interest not only in the pharmaceutical industry, where the final formulations are often solid dosage forms, but also in the product development of nutraceuticals and functional foods. The issue of rising healthcare costs due to the significant increase in the average life expectancy of the population has become a pressing concern. As a measure to reduce healthcare costs, the policy of self-medication is being promoted, where individuals manage minor health issues on their own. Consequently, the market for developing functional foods is becoming more active, and the demand for new functional foods is expected to grow increasingly. This article introduces several examples of how we have effectively utilized established techniques, such as spray-drying and wet milling, to prepare functional powders that meet next-generation requirements.

エレクトロスピニング法によるナノファイバー技術の医薬品製剤への応用と薬物封入技術について解説する。エレクトロスピニング法は、ポリマー溶液に高電圧を加えてナノメートルサイズの繊維を作製する技術であり、医薬品製剤においては従来プロセスでは加工が難しい不安定な薬物の安定化や放出制御にも優れた効果を発揮する。本稿では、著者らの研究に基づき、ナノファイバーの製剤技術の利点、薬物の封入技術、及び低分子薬物やタンパク質、核酸医薬への応用について詳述する。また、固体分散体としてのナノファイバー技術を用いた難水溶性薬物の溶解性改善や、コアシェル構造を利用した薬物放出制御の可能性についても議論する。エレクトロスピニング法で生成されたナノファイバーは製剤技術として幅広い応用が期待される。

【Abstract】
This paper provides an overview of the application of nanofiber technology and drug encapsulation techniques using electrospinning in pharmaceutical formulations.
Electrospinning is a method that uses high voltage to create nanometer-sized fibers from a polymer solution. It offers significant advantages in pharmaceutical formulations, particularly for stabilizing and controlling the release of unstable drugs that are difficult to process using conventional methods. Based on the authors' research, this paper details the benefits of nanofiber-based formulation technology, drug encapsulation methods, and the application of this technology to low molecular weight drugs, proteins, and nucleic acid medicines.
Additionally, it discusses the potential of using nanofiber technology as a solid dispersion system to improve the solubility of poorly water-soluble drugs and the use of core-shell structures for controlled drug release.
Nanofibers produced by electrospinning are expected to have broad applications as a formulation technology.

近年のAI 技術の進展に伴い、ライフサイエンス分野における画像解析AI 技術の導入が進んでいる。本稿では、AI 技術の普及例やAI 活用により期待される効果について概略を示したのち、画像解析AI 開発の基盤となる技術、特に近年の深層学習技術の発展について解説する。また、医薬品研究開発における画像解析AI の活用について、探索研究、前臨床試験、製造、臨床試験、市販後の各フェーズに分けて述べる。さらに、新薬候補化合物スクリーニングや製剤品質評価といった、医薬品研究開発における具体的な画像解析AI の活用事例を紹介する。最後に、ライフサイエンス分野に特化した画像解析AI 開発サービスについて議論する。

GMP 委員会CAL 分科会は、医薬品製造の現場で使用される計測機器のキャリブレーションの標準的なガイドを作成することを目標に活動を行っている。ガイドの作成にあたり、国内企業のキャリブレーションの実情を把握することが有用であると考え、アンケート調査を実施した。本稿ではアンケート結果と分科会としてのコメントを報告する。

指示薬法による滴定は、様々な定量分析法があるなか、いまだに多く利用されている。しかしながら指示薬法の多くは手作業・目視で実施されており、官能試験ゆえに人に依存して発生する個人差や人的ミスが生じることがある。
当社はこれまでの目視により判断していた色変化を、カメラ画像により色値を取得し、色変化の判断を自動化する滴定画像自動化装置を開発した。本装置は滴定結果だけでなく色変化のプロセスが保存できるため、従来はできなかった試験経過の振り返りを可能にするほか、データの信頼性の向上が期待できる。